離婚後の子どもの問題は「両親が話し合うべき私的な問題」だと思っていた
離婚した夫婦が子どもの親権・面会についてどう決めるかは、当事者同士で話し合うべき問題であって、法的な手続きは補助的なものだという認識がありました。裁判所が関与するにしても、子どもの「最善の利益」が判断の基準として適切に機能しているという前提がありました。
でもこの本を読んで、日本において離婚後に片方の親が子どもを「連れ去る」行為が、現行の法制度・裁判実務の下では事実上容認されており、連れ去られた側の親が子どもに会えなくなるケースが多発しているという現実を知りました。「子どもの最善の利益」を掲げる司法が、実際には子どもと親の別離を生み出していることがあるのです。
この一冊が、日本の家族法と司法のあり方や問題への見方を根本から大きく変えてくれました。
「現状維持優先」の原則が、連れ去りを有利にしていた
本書は、国際的な子どもの権利・家族法を専門とする著者が、日本における子どもの連れ去り問題の実態と法制度の問題点を分析した平凡社新書の一冊です。国際的な視点も交えながら、日本の家族法の特殊性を明らかにしています。
著者が指摘するのは、日本の裁判実務において「現状維持優先の原則」が強く働いているという問題です。一方の親が子どもを連れ去ってしまえば、「現在の生活状況の安定を重視する」という原則のもとで、その状態が既成事実化されやすいというのです。
欧米の多くの国では、子どもの連れ去りは「誘拐」として刑事事件になりえます。しかし日本では同居親による連れ去りが刑事上の問題にはなりにくく、別居親が面会を求めても実現しないケースが後を絶ちません。ハーグ条約に加盟している日本が、実際の条約運用においては不十分だという指摘も、国際的に問題視されています。連れ去られた側の外国人親が日本の法制度に翻弄されるケースは、国際的な問題として取り上げられてきました。子どもの「会う権利」と「連れ去られない権利」を確実に守るための制度の確立が、日本でも今まさに急務であるということです。本書にはさらに、当事者への取材を通じた具体的なケースと、法改正の動向についても詳しく語られています。ぜひ本書で確かめてみてください。
「法的に正しい」と「子どもにとって最善」が一致しないことを知った
この本を読んでから、家族法・親権に関するニュースを見るときに、「現行の制度が誰の利益を守っているのか」という問いを立てるようになりました。
制度は「誰かの利益」を守るために設計されていますが、その「誰か」に想定されていないケースが生まれることがあります。子どもの連れ去り問題は、そうした制度の重大な盲点を鋭く照らし出しています。
国際的な子どもの権利・家族法の専門家が問う「日本の親権問題」
国際的な子どもの権利・家族法を専門とする著者が、日本における子どもの連れ去り問題の実態と法制度の問題点を分析した平凡社新書の一冊です。制度の盲点と、そこで苦しむ当事者の実態が明らかになります。
この本を読まなければ、日本の家族法と司法を「子どもの最善の利益」を守るものとして受け取ったまま、連れ去り問題という制度的な矛盾を知らずにいたと思います。