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新書嫁レビュー ・ 約 3 分

脳の主役はニューロンだと信じていたら、本当の働き者を見落としていた

脳とは、神経細胞が考える臓器だと思っていた

脳の話といえば、いつもニューロン、つまり神経細胞が主役でした。記憶も、睡眠も、認知症の予防も、すべては神経細胞をどう守り、どう鍛えるかの問題だと思っていたのです。脳トレで神経細胞を刺激すれば脳は若く保てる、という話も素直に信じていました。けれど年齢を重ねるにつれ、もの忘れや集中力の低下を感じても、脳トレだけでは何かが追いついていないような、漠然とした不安がありました。その違和感の正体に光を当ててくれたのが、岩立康男さんの『脳の寿命を決めるグリア細胞』です。脳の主役だと思っていたニューロンの、すぐ隣にいた存在に目を向けることになりました。

脳の大部分を占めているのに、脇役扱いされてきた細胞

この本が主役に据えるのは、グリア細胞という、これまで多くの人が名前すら聞いたことのない細胞です。本書によれば、グリア細胞は脳の細胞の大半を占めているにもかかわらず、長いあいだニューロンを支えるだけの梱包材や、ただの支持組織のように見なされてきました。ところが実際には、思考や記憶、学習、情動といった働きに深く関わる、いわば陰の立役者だというのです。本書ではアストロサイト、オリゴデンドロサイト、マイクログリアといった種類ごとに、その多様な役割が一つずつ解き明かされていきます。なかでもオリゴデンドロサイトの働きには、神経に関心のある読者でさえ初めて知る情報が多く、読後にはその細胞に敬意を払いたくなるほどだといいます。さらに後半では、課題に取り組むときの集中系ネットワークと、休んでいるときに働く分散系ネットワークのバランスや、睡眠中にグリア細胞が果たす役割にまで話が及びます。読者から「脳の見方がガラッと変わった」という声が上がるのも頷ける内容で、医学論文に基づいた踏み込んだ話まで含めたその全体像は、ぜひ本書で確かめてみてください。

「休む」ことを、脳のための行動だと思えるようになった

この本を読んでから、日々の過ごし方が少し変わりました。以前の私は、ぼんやりしている時間を無駄なものだと感じ、空き時間があればすぐ何かを詰め込もうとしていました。休むことに、どこか罪悪感すらあったのです。けれど本書で、集中していないときに働く分散系のネットワークや、睡眠中のグリア細胞の働きを知ってから、意識して頭を休ませる時間を取るようになりました。散歩のあいだはあえて何も考えず、夜はだらだらせず早めに眠る。すると翌朝、前日に詰まっていた考えがすっとほどけていることがあるのです。何もしていない時間が、実は脳がメンテナンスをしている時間だった。そう思えるようになって、休息への向き合い方が変わりました。

脳外科医が現場で見てきたからこそ語れること

この本を読まなければ、私は脳トレだけを頼りに、肝心の働き者を見落としたまま脳を雑に使い続けていたはずです。著者の岩立康男さんは千葉大学の脳神経外科の教授で、長年にわたり脳腫瘍の手術と、グリア細胞が腫瘍化した「グリオーマ」の研究に取り組んできた医師です。医学論文に裏打ちされた踏み込んだ内容を、専門外の人にも伝わる語り口でほどいていく筆致には、現場で脳と向き合い続けてきた人ならではの説得力があります。脳の健康をニューロンの話だけで考えてきた人ほど、この一冊で見方が一変するはずです。

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脳の寿命を決めるグリア細胞 (青春新書INTELLIGENCE 637) 岩立康男 / 青春新書INTELLIGENCE

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