← ブックフィード 新書嫁 PR

新書嫁レビュー ・ 約 3 分

哲学は役に立たない、と決めつけていた私が出会った思考の道具箱

哲学は現実の役には立たないと思い込んでいた

哲学と聞くと、難解な原書を読み解き、答えの出ない問いをこねくり回す営みだと思っていました。仕事の納期にも、人間関係のもつれにも効かない、教養として知っていれば十分な遠い学問。そう決めつけていたのです。けれども、目の前の難問にぶつかるたびに、自分の考え方がいつも同じ袋小路に迷い込んでいることには気づいていました。同じ角度からしか物事を見られず、堂々めぐりする。その正体がわからないまま、もやもやを抱えていたのです。小川仁志さんの『「哲学」思考法で突然頭がよくなる!』を読んで、その思い込みが静かにほどけました。

哲学は「考えるための道具」だったという発見

本書が示すのは、哲学者たちの思想を、難解な理論としてではなく、日常の難問を解くための具体的な思考の道具として使うという発想です。著者は身のまわりのモノやテクノロジー、当たり前の日常を素材にしながら、三十一の思考法を一つずつ取り出して見せます。一つの思考法はわずか二、三ページ。一日ひとつ試せば一か月で手元に揃う構成になっています。哲学者の言葉を引きながら、たとえば物事の前提そのものを疑ってみる、あえて反対側の立場に立って眺めてみる、といった「視点をずらす技術」として整理されているのです。難しい原書を通読しなくても、デカルトやカントといった名前の背後にある考え方の骨組みだけを、生活の道具として借りられる。そこが新鮮でした。哲学は暗記する対象ではなく、頭の使い方そのものを更新する手つきなのだと気づかされます。本書には、これらの思考法を仕事や人生の難問に実際にあてはめてみる提案がさらに並んでいます。気になる方は、ぜひ本書で確かめてみてください。

行き詰まったときに、別の入り口が見えるようになった

読んでから、自分の中で変わったことがあります。会議で議論が膠着したとき、以前なら「どうすれば解決できるか」とだけ考えて空回りしていました。今は一度立ち止まって、「そもそもこの問題設定は正しいのか」と前提のほうを疑うようになりました。すると、解こうとしていた問いそのものがずれていたと気づくことがあります。たとえば「どうすれば残業を減らせるか」と悩んでいたものが、「そもそもこの作業は本当に必要なのか」と問い直すだけで、半分が消えてしまうこともありました。一つの入り口がふさがっても、別の入り口を探す手が増えた感覚です。思考が一本道だったころは、行き詰まりがそのまま無力感につながっていました。複数の角度を持てるようになってから、難問にぶつかっても、まだ試していない見方が残っていると思えるようになったのです。

知らなければ、同じ袋小路を回り続けていた

この本を手に取らなければ、私は哲学を遠い書棚にしまったまま、いつもの考え方で行き詰まり続けていたはずです。著者の小川仁志さんは京都大学法学部を出て伊藤忠商事や名古屋市役所に勤めたのち哲学者へ転じ、山口大学教授として公共哲学を専門に、商店街などで市民が語り合う「哲学カフェ」を主宰してきた人です。机上の学問ではなく、生活の現場で哲学を動かしてきた著者だからこそ、これだけ実用的な道具箱を編めたのだと感じます。哲学は役に立たないと決めつけていた方こそ、一度ひらいてみる価値のある一冊です。

この本を手に入れる

「哲学」思考法で突然頭がよくなる! (じっぴコンパクト新書) 小川仁志 / じっぴコンパクト新書

次の一冊 ── 同じ主題「哲学・思想」

しぐさで心理を読む方法 (KAWADE夢新書 S 442) 山辺 徹 / KAWADE夢新書 S 書評を読む →

← ブックフィードに戻る

「哲学」思考法で突然頭がよくなる! (じっぴコンパクト新書) Amazon 楽天