← ブックフィード 新書嫁 PR

新書嫁レビュー ・ 約 3 分

『大丈夫です』と言いながら腕を組んでいる人——動物行動学で読み解くしぐさの本心

「人の本心を知るには言葉のやり取りに集中するべきで、しぐさや動作は雑音であり気にする必要はない」とずっと思っていた

人とのコミュニケーションでは、相手の話す言葉に集中することが大事で、手の動かし方・あごの角度・目の動きといった細かな動作は「クセ」「個人差」として処理すれば十分——そう感じてきました。「しぐさ占い」「相手の本音を読む」というタイトルの本は、エンタメ的な雑学であって、本気の人間観察の道具とは思っていませんでした。

でも、明らかに「言葉では同意している」のに「相手の身体は緊張している」と感じる瞬間は確かにあって、その違和感の正体を言語化する手がかりがないままでいました。会議や面談で「うまく言ってくれているのに何かおかしい」と感じる経験を、どう整理すればよいか分かりませんでした。

山辺徹著『しぐさで心理を読む方法——ココロと動作の不思議を解く人間観察学』を読んで、その整理の手がかりが見えてきました。

「服従行動」「転位行動」「自己親密性」——しぐさには動物行動学が解明してきた心理メカニズムが宿っている

著者が本書で示す核心は、人間のしぐさが「個人のクセ」ではなく、「服従行動」「転位行動」「自己親密性」など、動物行動学や心理学が解明してきた心理メカニズムを身体に表すサインであり、これを読み取ることで「言葉では表現されない本心」が浮かび上がってくるという事実です。著者は6章構成で、指のしぐさ・手足のしぐさ・話すしぐさ・思わず出る動作・日本人特有の動作・男女別のしぐさを、それぞれ心理学用語と結びつけて解説します。

特に印象的なのは、「転位行動」という概念です。動物が葛藤状態にあるとき、その葛藤と無関係な動作(毛づくろい・身体を掻く等)を始める行動を動物行動学では転位行動と呼びます。人間もストレス・不安・葛藤を抱えると、髪を触る・ペンを回す・腕を組む・首を傾けるなどの転位行動を取ります。会議で「同意した」と発言した相手が頻繁に首筋を触っていたら、内心では葛藤を抱えている可能性が高い——こうしたサインの読み方は、漠然とした直感ではなく、行動学の知見に基づいた観察として整えられます。「自己親密性」とは、自分の身体に触れることで安心を得る無意識の行動で、緊張する場面で増えます。本書にはさらに、上目遣い・あごの角度・腕組みの位置といった具体的なしぐさの読み方が詳しく描かれています。ぜひ本書でその全貌を確かめてみてください。

人を観察する解像度が一段上がった

読む前と後で、人間関係への向き合い方が変わりました。以前は相手の「言葉」だけを聞いて理解した気になっていました。でも今は、「言葉」と「身体のサイン」を両方読みながら、両者がずれているときに敏感になれるようになりました。

具体的には、相手が「大丈夫です」と言いながら腕を強く組んでいたら、本当は大丈夫ではないかもしれないと察するようになりました。逆に自分自身が話すときの転位行動にも気づくようになり、緊張している自分のしぐさを意識できると、コミュニケーションの場での自己コントロールが少し効くようになります。「しぐさを読む」という技術は、相手を操作するためではなく、「言葉に出てこないものに敏感になる」という対人感受性を高める方向で使えます。

心理学・動物行動学の知見を一般読者向けに整理した実用書

山辺徹は心理学と動物行動学の研究成果を一般読者向けに整理する作家として、人間観察と心理理解のための実用書を多数発表してきた著者です。専門用語に偏らず、日常の場面で観察できる具体的なしぐさと、その背後にある心理メカニズムを結びつける書き方が、本書の親しみやすさを生んでいます。

この本を読まなければ、しぐさを「無意識の意味のない動作」として遠ざけたまま、無意識の動きこそが本心を漏らすという人間観察の科学と向き合う機会を持てないままでいたでしょう。

この本を手に入れる

しぐさで心理を読む方法 (KAWADE夢新書 S 442) 山辺 徹 / KAWADE夢新書 S

次の一冊 ── 同じ主題「心理」

ヤクザ式 図太く生きる心理術 (イースト新書Q) 向谷匡史 / イースト新書Q 書評を読む →

← ブックフィードに戻る

しぐさで心理を読む方法 (KAWADE夢新書 S 442) Amazon 楽天