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新書嫁レビュー ・ 約 3 分

AIを理解するのに必要な数学は、たった4つだった

AIの中身は、文系には一生わからない世界だと思っていた

ニュースでAIという言葉を聞かない日はありません。仕事でも生活でも、いつのまにかそばにある。それなのに、その中で何が起きているのかと問われると、急に黙り込んでしまう。どうせ難解な数式の塊で、理系の専門家にしか手の届かない領域なのだろう——。文系で育った私は、そう決めつけて、最初から理解をあきらめていました。けれど、わからないものに毎日囲まれている状態は、便利なはずなのにどこか落ち着きません。その靄を晴らしてくれたのが、永野裕之著『文系でもわかるAI時代の数学』です。

AIの土台は「統計」「微積分」「線形代数」「トポロジー」

本書が示すのは、意外なほどシンプルな見取り図です。AIの仕組みを理解するうえで核心になる数学は、統計、微積分、線形代数、トポロジーの四分野に整理できる、というのです。たとえば統計の章では、場合の数や確率、平均などの代表値、分散と標準偏差といった、名前は聞いたことのある概念が登場します。これらがAIにとってどんな役割を果たすのか、難しい数式を解かせるのではなく、数学者のエピソードや身近なたとえを通して輪郭をつかませてくれる。私が驚いたのは、四つという数の少なさでした。底なしに広がる世界だと思っていたものが、四本の柱で支えられていると分かるだけで、急に近づきやすくなります。しかも本書は、難解な数式を自分で解かせることを目的にしていません。数式の計算ができることと、その数式が何を意味しているかを知ることは別だ、という割り切りが心地よいのです。確率がなぜ予測に関わるのか、微積分がなぜ変化をとらえる道具なのか、その意味の部分だけを取り出して手渡してくれる。本書ではこの四分野それぞれが、AIのどの動きとつながっているのかまで踏み込んで描かれます。その先はぜひ本書で確かめてみてください。

ニュースのAIの話が、自分ごととして聞けるようになった

この見取り図を手にしてから、情報の受け取り方が変わりました。以前はAI関連のニュースが流れると、自分には関係のない専門家の話として聞き流していました。けれど今は、その裏側でおそらく統計や微積分の考え方が動いているのだと、土台を思い浮かべながら聞けるようになった。たとえば「予測」や「学習」という言葉が出てきたとき、その背後にどんな数学的な発想があるのかを、ぼんやりとでも想像できる。わからないものに囲まれている居心地の悪さが薄れ、世の中の動きに自分も地に足をつけて立ち会えている感覚が生まれました。誰かがAIについて語るのを、ただうなずいて聞くしかなかった頃とは違い、自分なりに問いを立てて受け止められる。専門家になる必要はなく、土台の輪郭を知っているだけで、これほど世界との距離が縮まるのかと驚きました。

知らないままでは、時代から取り残される不安を抱え続けていた

この本を読まなければ、私はAIを得体の知れないものとして遠ざけ、漠然とした不安を抱えたままだったはずです。著者の永野裕之氏は、東京大学理学部を卒業し、現在は大人向けの数学塾を主宰する人物です。指揮者としても活動した異色の経歴を持ち、難解な内容を平易に伝える著書を二十冊近く世に出してきました。数学のおもしろさを伝え続けてきた著者だからこそ、文系の私たちが何でつまずくかを知り尽くした語り口で導いてくれます。AIの中身を一度はのぞいてみたいと感じた方に、最初の一冊として勧めたい本です。

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文系でもわかるAI時代の数学 (祥伝社新書) 永野 裕之 / 祥伝社新書

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