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新書嫁レビュー ・ 約 3 分

安いニッポンの正体——『暮らしやすさ』ではなく『買えなさ』だった

「日本は物価が安く、清潔で治安もいいし、世界的にも豊かな先進国だ」とずっと思っていた

日本は経済大国であり、コンビニや外食が安くて便利、サービスの質も高い——そういう日常感覚から「豊かな国」というイメージを当然のものとして持っていました。海外旅行に行くと「外国は物価が高くて大変」と感じ、帰ってくると「やっぱり日本は暮らしやすい」と安心する。訪日外国人が増えているのも、日本の魅力に惹かれているからだと素直に受け取っていました。

でも、海外で働く日本人の話を聞くと「同じ仕事でも給料が2倍以上違う」「日本の物価が安すぎる」と言われ、賃金も物価も世界に取り残されているらしいという断片的な情報に触れるたびに、「日本の安さは本当に豊かさの証拠なのか」という違和感が広がっていました。

加谷珪一著『貧乏国ニッポン』を読んで、その違和感の正体がわかりました。

「安い国・日本」は豊かさの証拠ではなく、賃金も生産性も国際的に転落した結果だった

著者が本書で示す核心は、日本の「物価の安さ」が暮らしやすさの源ではなく、賃金が上がらず購買力が下がり続けた結果としての「安さ」だという事実です。欧米だけでなくアジア諸国と比較しても、日本の賃金は低水準であり、物価も連動して低く抑えられている——これは経済力の強さではなく、国際的な購買力の転落そのものを示しています。訪日外国人が増えているのも「安いから」買い物に来ているという側面が大きく、観光大国化は貧困化の裏返しでもあります。

特に印象的なのは、「規制改革もマクロ経済政策もバブル後の30年間で一通り試したが万策尽きている」という著者の冷徹な現状認識です。著者は経済評論家として個人レベルでの対処策を3つ挙げます——①外国に投資する、②外国で稼いで日本で暮らす、③外国にモノを売る。「国全体としての復活」を待つのではなく、「衰退する国に住みながら、衰退の影響を最小化する個人戦略」を持つことの重要性が論じられます。本書にはさらに、企業のサラリーマン経営者問題と生産性低下の構造的原因が詳しく描かれています。ぜひ本書でその全貌を確かめてみてください。

「物価が安い」という日常感覚への向き合い方が変わった

読む前と後で、日々の経済感覚との向き合い方が変わりました。以前は「安い昼食」「リーズナブルなサービス」を素直に喜んでいました。でも今は、「この安さは誰の賃金を犠牲にして成り立っているのか」「自分が受け取っている給料も同じ論理で抑え込まれているのではないか」という問いを持つようになりました。

具体的には、訪日外国人で賑わう観光地のニュースを見るとき、「外国人が落とすお金で経済が回る」という肯定的な見方と、「自国民の購買力が落ちた結果として外貨を取り込むしかない構造」という冷徹な見方を同時に持てるようになりました。投資・働き方・住む場所の選択を、「国の経済の動き」と切り離して個人の戦略として組み立てる視点が、本書を通じて獲得できました。

経済評論家・元日経BP記者が「安さ=貧しさ」を冷徹に示し個人戦略を提案した

加谷珪一は東北大学工学部卒業後、日経BP社で記者として経済取材を行い、その後野村證券グループで投資ファンド運用会社の企業評価・投資業務を担当した経済評論家です。記者と実務家の両方の視点を持つ著者だからこそ、本書ではマクロ経済の悲観的な分析にとどまらず、個人がどう生き延びるかという実践的戦略まで踏み込んだ提案が展開されています。

この本を読まなければ、「安い日本=暮らしやすい日本」という日常感覚をそのまま受け取ったまま、安さこそが貧しさの証拠だという冷徹な経済の論理と向き合う機会を持てないままでいたでしょう。

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貧乏国ニッポン ますます転落する国でどう生きるか (幻冬舎新書) 加谷 珪一 / 幻冬舎新書

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