お金を貯めるには、まず収入を増やすしかないと思っていた
お金を貯めたいと思ったとき、私が真っ先に考えたのは「もっと稼がなければ」ということでした。収入が増えなければ手元に残るお金も増えない。そう信じて疑わなかったのです。けれど、どれだけ頑張っても生活はなかなか楽にならず、漠然とした焦りだけが積み重なっていく。同じくらいの給料のはずなのに、なぜか余裕のある人がいる。その違いがどこから来るのか分からないまま、お金の話題になるたびに、どこか居心地の悪さを感じていました。大村大次郎さんの『税務署員がこっそり教えるお金の裏ワザ』は、その引っかかりに思いがけない角度から答えてくれる一冊でした。
蓄財の鍵は「収入」ではなく「知識」だった
本書が示すのは、お金が貯まるかどうかを分けるのは収入の多さではなく、税金や制度についての知識だという視点です。著者が注目するのは、決して高給とは言えない税務署員が、なぜか裕福な暮らしをしているという事実。本書によれば、税務署員の持ち家率は非常に高いとされ、その背景には、彼らが調査の現場で富裕層や事業家の蓄財のしくみを間近で見てきた経験があるといいます。税金は払うだけのものではなく、知識しだいで「使える」ものになる。不動産や保険、年金、各種の制度をどう組み合わせるかで、同じ収入でも手元に残るお金は大きく変わってくる。本書ではさらに、なぜ給与所得者が不動産の賃貸に関わると有利になりやすいのか、投資とどう向き合うべきか、借金とのつき合い方をどう考えるべきかについても、章を分けて具体的に語られています。著者によれば、税金は「払うもの」ではなく「使うもの」だという発想の転換こそが、蓄財の出発点になるといいます。読み進めるほど、自分がいかに制度を知らずに損をしてきたかが見えてきます。
「稼ぐ」より先に「知る」に意識が向くようになった
この本を読む前、私のお金に対する関心は「どうやって収入を増やすか」の一点に向いていました。けれど読んだあとは、まず「自分が使える制度を知っているか」を考えるようになったのです。確定申告の時期に、これまで面倒だと避けていた控除の仕組みを調べてみたり、ニュースで税制の話題が出たときに、自分の生活にどう関わるのかと耳を傾けるようになりました。以前は他人事だった「節税」という言葉が、急に自分のための道具のように感じられる。給与明細を眺めるときも、ただ手取りの数字を見るだけでなく、そこから何が引かれ、どの部分が制度によって変わりうるのかと、目線が変わりました。お金の不安の正体が、稼ぎの不足ではなく知識の不足だったと気づいたとき、肩の荷が少し軽くなった気がしました。漠然とした焦りが、何を学べばいいのかという具体的な問いに置き換わったのです。
知らないだけで損をしていた、と気づいてしまった
この本を読まなければ、私はずっと「お金を貯めるには稼ぐしかない」という思い込みのまま、知らずに損をし続けていたと思います。著者の大村大次郎さんは、国税局で約10年にわたり主に法人税の調査官を務めた元国税調査官です。富裕層の財布の中身を最も近くで見てきた立場だからこそ書ける、現場の知恵が詰まっています。お金の不安を収入のせいだと思い込んでいた方には、その思い込みがどこから来ていたのかを確かめる入り口になるはずです。