退職金があれば老後は安心だと思っていた
会社員として長年勤め、定年時にまとまった退職金を受け取れれば老後の生活は安定する——そんな思い込みが根強くありました。退職金という制度そのものへの信頼が強く、「退職金があれば何とかなる」という感覚が、定年後の資産管理についての積極的な学びを妨げていたのです。
しかし実際には、退職金を受け取ったあとの使い方・運用の仕方を間違えることで、老後の資産が急速に目減りするケースが多いという事実があります。「もらえれば安心」という思い込みが、「受け取った後をどう生かすか」という最も重要な問いを考える機会を奪っていたのです。
この本が、老後の資産形成への見方を根本から変えてくれました。
退職金で「損をする人」に共通するパターン
本書は、セゾン投信会長として長年にわたり長期投資の普及に取り組んできた中野晴啓が、退職金の受け取り後に陥りやすい落とし穴と、50代からでも資産を効果的に増やす方法を解説した一冊です。講談社+α新書として、実践的なマネーリテラシーを伝えています。
著者が「退職金バカ」と呼ぶのは、退職金という大きな資産を手にしたことで、むしろ判断を誤ってしまう人たちのことです。「まとまったお金が手に入った」という感覚が、通常よりもリスクの高い投資商品への興味や、詐欺的な金融商品への誘惑につながるのです。また退職金を全額定期預金に預けたまま運用せずにいることも、インフレによる実質的な資産価値の低下という形の「損」になります。
50代から資産を殖やせる人の特徴として著者が挙げるのは、「時間を味方につける長期投資」の姿勢です。退職まであと10〜15年ある50代は、決して「遅すぎる」年代ではなく、複利の効果を活かせる期間がまだ十分に残されているのです。本書にはさらに、退職後のポートフォリオの組み方と、60代・70代での資産活用戦略についても詳しく解説されています。ぜひ本書で確かめてみてください。
「受け取ることより使い方が大事」という転換
この本を読んでから、老後のお金について「いくら受け取れるか」ではなく「受け取ったあとをどう生かすか」という問いを立てるようになりました。退職金という制度への漠然とした信頼の代わりに、自分で考えて動くという姿勢の必要性が実感できたのです。
お金に働いてもらうという発想は、「貯める」から「増やす」への転換であり、それは50代からでも遅くないという希望を与えてくれます。「時間を味方にする投資」という視点を持てると、老後の準備が義務感ではなく、自分で積み上げていく喜びに変わります。老後のお金への向き合い方が、前向きなものになったのを感じました。
セゾン投信会長が語る「老後資産の本当の問題」
セゾン投信会長として長期投資の普及に取り組んできた中野晴啓が、退職金という大きなテーマを正面から論じた一冊です。感情論ではなく、資産運用のプロとしての実践的な知見が随所に活きています。
この本を読まなければ、退職金への安心感のまま、老後の資産管理で陥りやすい落とし穴に無防備なままだったと思います。「受け取ること」と「生かすこと」は別の問題だという当たり前の事実を、読んで初めて腑に落ちた気がします。