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新書嫁レビュー ・ 約 3 分

896の町が消える——それは「他所の話」ではなかった

地方の衰退は、地方の問題だと思っていた

地方の過疎化や人口減少は、遠い地方の出来事であり、都市に住む自分には直接関係のない話だと思っていました。「地元に仕事がないから若者が出て行く」という話は以前から聞いていましたが、それはその地域の経済的な問題であり、東京や都市圏の住人がどうにかできることではないという感覚がありました。しかし、この本を読んで、その認識が間違いであることに気づきました。地方の消滅は地方だけの問題ではなく、東京が引き起こしている問題であり、東京もまたその結果に苦しむ構造だったのです。

若者が東京に来るたびに、日本全体の子どもが減っていた

この本が提示するデータは衝撃的です。2014年の段階で、2040年までに896の自治体が若年女性人口の急減により「消滅可能性都市」に分類されるという予測です。この予測は、著者が委員長を務めた日本創成会議・人口減少問題検討分科会が算出したものです。

問題の核心は、東京の出生率が全国最低水準であることです。若者が子育て環境の整っていない東京に集中し、そこで子どもを産まないまま人生を送ることで、地方の人口が減るだけでなく日本全体の出生数も減り続けます。地方から若者が流出することで地方が弱体化し、東京に集まった若者が低出生率の環境に置かれることで国全体の人口が縮小するという二重の損失が起きているのです。

増田寛也は岩手県知事を12年間務め、総務大臣も経験した政治家・行政家です。実際の地域行政の現場を知る彼の視点は、統計分析に現実感と切迫感を与えます。本書にはさらに、人口減少に歯止めをかけるための具体的な政策提言についても詳しく述べられています。ぜひ本書で確かめてみてください。

「無関係」が「当事者」に変わった感覚

この本を読む前、選挙で地方創生を訴える候補者の演説を聞いても「大事なことだとは思うが、自分には関係ない」という距離感がありました。読んだ後は、その感覚が変わりました。自分が東京に住み、東京で消費することが、東京の過密と地方の空洞化を同時に深めているという構造が、自分ごととして見えてきたからです。

地方の市役所が機能しなくなれば、インフラの維持も、食料の生産も、観光資源の保全もできなくなります。それは東京に住む人間にも確実に影響を与えます。出張や旅行で訪れた地方の駅周辺がシャッター商店街になっている光景を、かつては「寂しいな」と感じるだけでしたが、今は「この延長に何があるか」を考えるようになりました。

本書には、この問題への処方箋として「コンパクトシティ化」と「地域への移住支援」という方向性も提示されています。消滅可能性都市の中でも、政策によって流出を食い止めることに成功した事例も存在しており、著者は絶望的な未来を描くだけでなく、何が機能するかという実証的な考察を丁寧に行っています。2014年に発表されたデータが、10年以上経った今も繰り返し引用される理由は、その問いの本質が変わっていないからです。数字が示す未来と、それに向き合うための視点が、この一冊に凝縮されています。

知ることで、無関心でいることが難しくなる——それは不快さではなく、世界とつながる感覚です。

岩手県知事と総務大臣を歴任した行政の実践者が描く日本の未来

増田寛也は1951年生まれ、東京大学法学部卒業後に旧建設省に入省し、岩手県知事(1995〜2007年)、総務大臣(2007〜2008年)を経て、現在は日本郵政取締役代表執行役社長を務めています。本書は第8回新書大賞を受賞し、「地方消滅」という言葉を社会に定着させた先駆的な著作として知られています。

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