「思春期の子が反抗するのは、親の愛情が足りないか、しつけが甘かったからだ」とずっと思っていた
思春期の子どもが暴言を吐く・会話を拒む・無気力になる——そういう姿を見ると、「親のしつけが間違っていた」「もっと愛情をかけていれば」と、親の側の責任で説明してしまう発想がありました。「反抗期は通過儀礼」と頭では分かっていても、いざ目の前で起きると、自分を責めたり子どもを責めたり、感情の応酬で関係を悪化させてしまう——その悪循環の解き方を知りませんでした。
でも、明らかに愛情を注いでいる親の家でも思春期の衝突は起きるし、逆に厳しい環境で育った子が穏やかに思春期を過ごす場合もあります。「親の愛情の量」だけでは説明しきれない何かが、思春期の振る舞いを左右している感覚はありました。その「何か」を言語化する手がかりがありませんでした。
土井高徳著『思春期の子に、本当に手を焼いたときの処方箋33』を読んで、その手がかりが見えてきました。
思春期の「扱いづらさ」は親の愛情不足ではなく、発達段階の課題が表面化した現象であり、見方を変えれば対処できる
著者が本書で示す核心は、思春期の子どもの「扱いづらさ」が親の根性や愛情の量の問題ではなく、10歳から22歳くらいまでの発達段階で必然的に表面化する課題が形を変えて現れた現象であり、「どう叱るか」ではなく「何が起きているか」を見抜く視点を持てば対処できるという姿勢です。著者は日本でただ一人の「治療的里親」として、福岡県北九州市の「土井ホーム」で37年間100人を超える、他の施設では手に負えないほどの傷を抱えた子どもたちと関わってきた経験を踏まえて、33の処方箋を整理します。
特に印象的なのは、「親が変わる」が章の一つとして据えられている点です。思春期の衝突の多くは、子どもの問題だけでなく、親自身が「自分の子ども時代の傷」「自分が親から受けた扱い」を無自覚に子どもに繰り返している場合がある。著者はそれを「親の問題」と切り捨てるのではなく、「親が自分の感情パターンを理解し、感情コントロールの技術を身につけることが、子どもとの関係を変える」という具体的な道筋として提示します。子どもとの接し方のテクニック(質問の仕方・沈黙の使い方・距離の取り方)も、抽象論ではなく現場の経験から抽出された具体策として並びます。本書にはさらに、暴言・無気力・親を試す行動・自傷・摂食障害などの場面別対処法が詳しく描かれています。ぜひ本書でその全貌を確かめてみてください。
「思春期の衝突」を別の角度で見る視点が生まれた
読む前と後で、子どもとの関わりへの向き合い方が変わりました。以前は子どもの問題行動を見ると、「叱るべきか・諭すべきか・我慢すべきか」の選択に追い込まれていました。でも今は、「この行動の背後で、子どもの中で何が起きているか」「自分の反応のパターンは何を繰り返しているか」を一度立ち止まって観察するようになりました。
具体的には、子どもが部屋に閉じこもったり暴言を吐いたりしたとき、即座に介入するのではなく、「これは発達課題の表れか、何かのSOSか」を見極める間を持てるようになりました。同時に、自分自身の感情の動き——苛立ち・不安・無力感——にも気づき、その感情に飲み込まれずに対応する余裕が少し生まれます。「親の愛情の量」という一次元の評価軸ではなく、「発達課題への理解」「親自身の感情コントロール」「具体的な接し方の技術」という多軸で関係を整える視点が、本書を通じて獲得できました。
日本でただ一人の「治療的里親」が、37年・100人の経験から処方箋を抽出した
土井高徳(1954年北九州市生まれ)は学術博士で、福岡県北九州市の「土井ホーム」代表として、他施設では手に負えないほどの傷を抱えた子どもたちを37年間で100人以上預かってきた、日本でただ一人の「治療的里親」です。最も困難なケースの子どもたちと向き合い続けてきた現場経験を持つ著者だからこそ、本書では一般家庭の思春期の衝突に対しても、即実用的な処方箋を提示する射程が成立しています。
この本を読まなければ、思春期の衝突を親の愛情不足として自分を責め続けたまま、子の行動の背後にある発達課題を見抜く視点と向き合う機会を持てないままでいたでしょう。