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新書嫁レビュー ・ 約 3 分

「人に迷惑をかけるな」——よかれと思ったその言葉が、子を縮こませていた

子どもにかける一番大事な言葉だと信じていました

人に迷惑をかけてはいけない。私はこの言葉を、子育てや人付き合いの基本だと信じてきました。きちんとした人間に育てるための、いわば土台のしつけだと思っていたのです。けれど、この言葉を口にするたびに、相手がどこか小さく縮こまるような感覚を覚えることがありました。その違和感の正体がわからないまま、私はこの言葉を正しいものとして使い続けていたのです。その認識を根底から覆してきたのが、この一冊でした。

「迷惑をかけるな」は、挑戦をためらう心を育てていた

本書によれば、海外の子育てでは「人に迷惑をかけるな」という言葉はあまり使われず、むしろ「困っている人がいたら助けよう」という前向きな声かけのほうが重んじられるといいます。一方で「迷惑をかけるな」と言われ続けると、人は自分を抑え込み、何かに挑戦すること自体をためらうようになるというのです。失敗して誰かに迷惑をかけることを恐れるあまり、一歩を踏み出す前に手を止めてしまう。そうした心の動きが、よかれと思った言葉から生まれていることに、本書は光を当てます。著者は、親が言ってしまいがちな言葉を、より良い言い換えとともに具体的に示しています。たとえば「やる気あるの?」ではなく「やる気出してるじゃん!」、「勉強しなさい!」ではなく「勉強すると、こんなふうになれるよ」。言葉のわずかな違いが、子どもの思考と認知のかたちをつくっていくと本書は語ります。著者は序章で、日本人の多くが可能性をつぶす言葉をかけられていると指摘しており、その先には、声かけを変えることで人がどう伸びていくかが、グローバル時代の子育てという文脈とともに、より踏み込んだ形で描かれています。叱るための言葉ではなく、相手の中の可能性を信じる言葉をどう選ぶか。その実例の数々を読むうちに、自分がふだん何気なく口にしている言葉を、思わず点検したくなります。

言葉を選び直すようになって、関係が軽くなった

知る前の私は、相手の失敗を見るたびに反射的に注意の言葉を探していました。けれど読んだ後は、まず相手のどこを認められるかを考えるようになりました。子どもが食器を割ってしまったとき、以前なら「気をつけなさい」と言っていた場面で、「片づけ手伝ってくれてありがとう」と先に言えるようになったのです。すると相手の表情がほどけ、こちらの肩の力も抜けていきました。同じことは大人どうしのやりとりでも起きました。仕事で後輩がミスをしたとき、責める言葉より先に「ここまでよくやったね」と言えると、相手は萎縮せずに次の一歩を踏み出していく。言葉ひとつで、その場の空気がこんなに変わるのかと驚かされました。叱ることでしか伝えられないと思い込んでいた自分の世界が、ずっと風通しよく感じられるようになったのです。

知らないままだったら、よかれと思って縛り続けていた

この本を読まなければ、私は善意のつもりで、相手を縮こませる言葉を使い続けていたはずです。著者の坪田信貴さんは、坪田塾の塾長として1300人以上を個別に指導してきた人物で、心理学を用いた独自の教育メソッドで知られています。学年ビリの生徒を難関大学合格へ導いた経験を持つ実践者だからこそ、言葉が人の可能性に及ぼす力を具体的に語れるのだと感じます。自分のかける言葉が、知らぬ間に誰かを縛っているかもしれない。そう感じた方にこそ、手に取ってほしい一冊です。

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「人に迷惑をかけるな」と言ってはいけない (SB新書) 坪田信貴 / SB新書

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