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新書嫁レビュー ・ 約 3 分

わかりやすく説明できれば教えられる——その思い込みが伸び悩みを生んでいた

「上手に説明できれば、相手はわかってくれる」と信じていた

誰かに何かを教えるとき、私はずっと「いかにわかりやすく説明するか」が勝負だと思っていました。要点を整理し、噛み砕いて、順序立てて話す。それさえ磨けば相手は理解してくれるはずだと信じていたのです。ところが現実は違いました。同じ説明をしても、すっと飲み込む人もいれば、まったく響かない人もいる。自分の伝え方が悪いのかと落ち込みながらも、どこか腑に落ちないものがありました。その正体を、青戸一之・西岡壱誠著『家庭教師の技術』が言い当ててくれました。

教え方は、相手のタイプによって「まるごと変わる」

この本がまず突きつけてくるのは、教え方は生徒のタイプによってまったく変わる、という事実です。説明の上手さは技術のごく一部にすぎず、その前に「相手がどういうタイプの学び手なのか」を見極めることが出発点だというのです。同じ教え方が万人に効くという前提そのものが、伸び悩みの原因だったわけです。本書はこれをティーチング、コーチング、コミュニケーションという三つの層に分けて整理しています。ティーチングの章では生徒を伸ばす教え方の鉄則を、コーチングの章では生徒との関わり方の鉄則を、コミュニケーションの章では効く質問の仕方や褒め方を、それぞれ具体的な箇条として示していきます。たとえば、ただ「よくできたね」と褒めるのと、何がどうよかったのかを言葉にして返すのとでは、相手のその後の動き方がまるで違ってくる。そうした一つひとつの所作の差が、結果を大きく分けるというのです。説明という一点だけを磨いてきた身には、教えるという行為がこんなにも多層的だったのかと驚かされます。本書にはさらに、つまずいた生徒への具体的な対応をめぐるお悩み相談まで収められているので、ぜひ本書でその技術の全体像を確かめてみてください。

「伝わらない」を相手のせいにしなくなった

この考え方に触れてから、人に何かを教える場面での私の振る舞いが変わりました。以前は伝わらないと、つい相手の理解力や集中力のせいにして、同じ説明をもう一度、声を大きくして繰り返していました。後輩に仕事を教えるときも、できないのは聞く側の問題だと内心で決めつけていたのです。今はまず、この人はどこでつまずいているのか、どう問いかければ自分で気づけるのかを考えるようになりました。「ここまではわかった、では次はどうなると思う」と一度相手に投げ返してみる。一方的に話す時間が減り、相手に質問を返す時間が増えたのです。すると不思議なことに、こちらが説明しすぎなくても相手が自分で答えにたどり着く瞬間が生まれるようになりました。その瞬間の相手の表情は、こちらが一方的に解説していたときとはまるで違います。教えるとは押し込むことではなく、引き出すことなのだと、日々の会話の中で実感しています。

偏差値の崖を越えた二人だからこそ書ける技術

この本を読まなければ、私はこれからも説明の上手さばかりを磨いて空回りしていたはずです。著者の一人、西岡壱誠は偏差値三十五から東大を目指して合格し、漫画『ドラゴン桜2』の編集にも携わった人物です。もう一人の青戸一之は三十歳で東大受験を決意し三十三歳で合格、その後プロ家庭教師として多くの生徒を導いてきました。自ら学びの崖を越え、人を導いてきた二人だからこそ書ける実践知がここにあります。教えることや人を伸ばすことに関わる方は、ぜひこの一冊を手に取ってみてください。

この本を手に入れる

家庭教師の技術 (星海社新書 313) 青戸 一之, 西岡 壱誠 / 星海社新書

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