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新書嫁レビュー ・ 約 3 分

「コミュニケーション力は話題の豊富さや語彙の多さが決める」という思い込みが、話の流れを読む文脈力こそが核心だという事実を見えなくしていた

「話が上手い人は話題が豊富で雑学が多く、場の空気を読んで面白いことが言える人だ」とずっと思っていた

コミュニケーションが得意な人というのは、引き出しが多くて会話を盛り上げるネタを持っている人だという感覚がありました。「会話力」を上げるには語彙を増やし、豆知識を蓄え、面白い体験を増やすことだという前提がありました。「空気を読む」という言葉も何となくわかるようで、具体的に何をすればいいのかが掴めないままでいました。

でも、知識豊富なのに話が嚙み合わない人、逆に語彙が少ないのに場の流れを作るのが上手い人——そういう差の正体が、うまく説明できませんでした。コミュニケーションの質を決めているものが何なのか、言語化できないままでいました。

齋藤孝著『コミュニケーション力』を読んで、その正体がわかりました。

コミュニケーションの核心は「文脈力」——話の流れをつかみ、作り出す力だった

著者が本書で示す核心は、コミュニケーション力の基盤は話題の量や語彙の豊富さではなく「文脈力」——話の流れをつかみ、その流れに沿いつつ新しい方向を生み出す力にあるという事実です。コミュニケーションとは「意味と感情のやり取り」であり、この二つを座標軸にして会話の状態を把握できるかどうかが、生き生きとしたやり取りと噛み合わない会話の差を生みます。

特に印象的なのは「沿いつつずらす」という技法です。相手の文脈に完全に同調するのではなく、かといって無関係な方向に引っ張るのでもなく、流れの中に乗りながら少しずつ違う視点や話題を持ち込む——この技法が会話に奥行きを生みます。また著者は、コミュニケーションの「身体的な基盤」——声のトーン、視線、距離感、テンポ——がいかに重要かも詳しく論じます。言葉の内容よりも身体的な共鳴がコミュニケーションの質を決めることがある、という認識は目からウロコです。本書にはさらに、文脈力を実践的に鍛える具体的な方法と、和歌・連歌の例を通じた日本的コミュニケーションの分析が続きます。ぜひ本書でその全貌を確かめてみてください。

「なぜあの会話は嚙み合わなかったのか」という問いに答えられるようになった

読む前と後で、会話を振り返るときの視点が変わりました。以前は「あの場で面白いことが言えなかった」という自己評価で終わっていました。でも今は、「あの場で文脈をうまくつかめていたか、意味の流れに乗れていたか」という問いで振り返るようになりました。

具体的には、会話が嚙み合わなかったとき「相手の感情面と意味面のどちらに乗れていなかったのか」を問うようになりました。話題が豊富でも感情的な共鳴がなければコミュニケーションは成り立たない、逆に感情的に共鳴していても意味の方向が合わなければ会話が深まらない——この二軸の分析は、日常のコミュニケーションを具体的に改善する手がかりになります。また「沿いつつずらす」という技法を意識すると、会話の流れを壊さずに自分の意見や視点を自然に差し込めるようになる瞬間が増えました。

明治大学教授が「意味と感情の座標軸」でコミュニケーションの本質を解明した

齋藤孝(1960年生まれ)は明治大学文学部教授として教育学・身体論・コミュニケーション論を専門とし、「声に出して読みたい日本語」「読書力」などのベストセラーを著した著者です。前著「読書力」が知識を体に取り込む「インプットの力」を問うたとしたら、本書はその知識と感情を人との間で交わす「アウトプットの力」を体系的に解明した一冊です。コミュニケーションの本質を身体・文脈・技法から論じる視点は、今も多くの読者に影響を与え続けています。

この本を読まなければ、コミュニケーション力を話題の多さや語彙の豊富さだと思ったまま、文脈力と身体的な共鳴こそが生き生きとした会話を生む核心だという事実と向き合う機会を持てないままでいたでしょう。

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コミュニケーション力 (岩波新書 新赤版 915) 齋藤 孝 / 岩波新書 新赤版

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