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新書嫁レビュー ・ 約 3 分

あのシュクメルリの故郷は、ワイン発祥の地だった

ジョージアを「松屋の料理の国」だと思っていた

ジョージアという国について、私が知っていたのはほとんどシュクメルリだけでした。松屋のメニューで話題になった、にんにくの効いたクリーム煮。あの料理のおかげで名前は覚えたものの、どこにある国なのか、どんな歴史を持つのか、まるで像を結びませんでした。地図のどこかにある遠い国、くらいの認識です。その曖昧さのまま、せっかく耳にした国名がただの料理名で終わってしまうのが、どこか惜しいような気もしていました。その思い込みを心地よく裏切ってくれたのが、ティムラズ・レジャバさんの『大使が語るジョージア』です。

ワイン8000年の歴史を持つ、文明の十字路

この本を開いて驚いたのは、ジョージアがワイン発祥の地とされていることでした。その歴史はおよそ8000年にさかのぼるといわれ、クヴェヴリと呼ばれる素焼きの壺を地中に埋めて醸す伝統的な製法は、2013年にユネスコの無形文化遺産に登録されています。土の中で時間をかけて熟成させるこの作り方は、現代の大量生産とはまるで違う発想です。ジョージアはヨーロッパとアジアの境にある「文明の十字路」で、独自の文字や言語、世界遺産に登録された建築を育んできました。本書はジョージア各地の観光案内から、歴史と文化を深く知る章、そして日本でも楽しめる料理の世界まで、大使自らが案内していきます。ある読者は、独特の丸みを帯びたジョージア文字が日本で顔文字に使われていることを本書で知って驚いたと書いています。日本の平仮名と同じように、ジョージア文字もまたこの国固有の文字なのだと、著者は力を込めて紹介しているそうです。シュクメルリやワインの背後にどれほど深い文化が広がっているのか、その続きはぜひ本書で確かめてみてください。

一皿の料理が、一つの国の入り口になった

この本を読んでから、食べ物の見え方が変わりました。以前は、シュクメルリを「変わった名前のおいしい料理」としか思っていませんでした。今は、あの一皿の向こうに、8000年のワイン造りや、文明の交差点としての長い歴史が広がっているのだと想像するようになったのです。スーパーでジョージアワインを見かけると、つい手に取って産地やぶどうの品種を確かめてしまう。チーズ入りのパン「ハチャプリ」や、餃子を思わせる「ヒンカリ」といった料理の名前を覚え、いつか本場で食べてみたいと思うようになりました。料理名でしかなかった国名が、地図のうえで行ってみたい場所に変わったのです。一つの食べ物が、未知の文化への扉になる。その感覚を、久しぶりに味わっています。

知らなければ、料理名のままで終わっていた

この本に出会わなければ、ジョージアは私にとってずっと「松屋で食べたシュクメルリの国」止まりだったと思います。著者のティムラズ・レジャバさんは現役の駐日ジョージア大使で、ユーモアあふれるSNSの発信でも親しまれている人物です。母国を誰よりも愛する大使自身の言葉だからこそ、淡々とした観光ガイドにはない熱量と、現地の手触りが一冊に満ちています。観光、歴史と文化、料理という三つの入り口から、無理なく国の全体像が見えてくる構成も親切です。名前だけ知っている国が、実は8000年の文化を抱えた奥深い場所だった。そんな発見の喜びを味わいたい人にぴったりの一冊です。

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大使が語るジョージア 観光・歴史・文化・グルメ (星海社新書) ティムラズ・レジャバ, , / 星海社新書

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