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新書嫁レビュー ・ 約 3 分

貧困とは「お金がないこと」だと、私は取り違えていた

貧困の問題は「収入の多い少ない」だと思っていた

貧困や格差という言葉を聞くと、私はいつも頭の中で「お金が足りない人の話」に変換していました。だから対策といえば、給付や支援金を配ればいい、というくらいの単純なイメージしか持っていませんでした。けれど、そう考えていると、なぜか議論がいつもかみ合わない感覚がつきまといます。お金を配っても解決しない問題がある気がするのに、その正体がうまく言葉にできない。そんなもやもやを抱えていました。阿部彩さんの『弱者の居場所がない社会』を読んで、私が見落としていたものがはっきりとわかりました。貧困の核心は、必ずしもお金そのものではなかったのです。

人を追いつめるのは、収入よりも「居場所」と「つながり」の喪失だった

本書が鍵として掲げるのは、「社会的排除」と「社会的包摂」という二つの言葉です。社会的排除とは、文字どおり「社会から追い出されること」を意味します。それは収入の問題だけではありません。本書によれば、人は誰しも「居場所」「つながり」「役割」を持って生きていたいと願う存在であり、それらを失うことこそが、人を深く追いつめていくというのです。お金はあっても、社会の中に自分の座る場所がない、誰ともつながっていない、果たすべき役割がない——そうした状態が、貧困の本当の苦しさを形づくっている。だからこそ、これからの社会保障は「社会包摂」、つまり人を社会に包み込む視点なしには語れない、と著者は主張します。本書では、生活崩壊の実態から「最低生活とは何か」という問い、そして「本当はこわい格差の話」まで、データと現場の両面から踏み込んだ議論が展開されています。格差が広がることは、貧しい人だけの問題ではなく、社会全体に静かに影を落としていく——そんな見過ごされがちな連鎖についても、本書は具体的な数字を示しながら描き出します。読み進めるうちに、私が「お金の話」だと思っていた貧困が、実は人と社会のつながりそのものの問題だったことが、少しずつ腑に落ちていきました。

ニュースの見え方が、根っこから変わった

この本を読んでから、社会のニュースの受け取り方が変わりました。以前は、生活に困っている人の話を聞くと「いくら足りないのだろう」と金額に置き換えて考えていました。今は、その人が誰とつながっているか、社会の中に役割を持てているか、という方に自然と目がいきます。職場で孤立している同僚を見たときも、引きこもりという言葉を聞いたときも、それを「居場所の問題」として捉え直せるようになりました。困窮を金額の多寡ではなく、人と社会の結びつきの問題として見る。その視点を得たことで、これまで漠然と感じていた社会への違和感が、ひとつずつ整理されていく感覚がありました。

知らないままだったら、ずっと的外れな同情をしていた

この本を読まなければ、私は貧困を「お金の問題」と取り違えたまま、的外れな同情を続けていたと思います。著者の阿部彩さんは、マサチューセッツ工科大学を卒業し、タフツ大学で修士号・博士号を取得した、貧困・社会的排除研究の第一人者です。国立社会保障・人口問題研究所で実証研究を重ねてきた専門家だからこそ書ける、データに裏打ちされた説得力があります。自分の中の「貧困」の定義が古いかもしれないと感じたら、本書で確かめてみてください。

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弱者の居場所がない社会――貧困・格差と社会的包摂 (講談社現代新書 2135) 阿部 彩 / 講談社現代新書

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