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新書嫁レビュー ・ 約 3 分

江戸時代の「不義密通」が、今も変わらない人の心を映している

江戸時代の不義密通は、今とは全く別の話だと思っていた

江戸時代の不倫や駆け落ちは、現代とは全く異なる社会構造の中で起きた遠い話であり、現代人の感覚では理解できないものだ——そう思っていました。武家社会の厳格な道徳規範、妻を「妻敵討」として討ってもよいという制度、姦通に対する過酷な制裁——これらは現代とは切り離された別の世界の話だという先入観があったのです。

しかしこの本を読んで、江戸時代の不義密通を巡る人々の感情や葛藤が、現代の私たちのそれと驚くほど変わらないことに気づきました。人間の「禁じられた感情」と「社会の規範」との衝突は、時代を超えて同じ形をしているのです。その発見は、歴史を学ぶことの意味を全く変えてくれました。

この本が、江戸時代への見方を根本から変えてくれました。

歴史資料が明かす「禁じられた恋」の実態

本書は、日本近世史の専門家・氏家幹人が、江戸時代の不義密通(婚外の性的関係)・駆け落ち・近親相姦に関する歴史資料を丹念に読み解いた学術的エッセイです。講談社選書メチエの一冊として、厳密な史料批判に基づく内容が、一般読者にも読みやすい形で書かれています。

特に興味深いのは、章立ての構成です。「人妻浮游」「性愛の現実」「不義の制裁」「妻敵討」という章タイトルが示す通り、本書は不義密通という行為の実態から、それに対する社会的制裁の仕組み、さらには当事者たちの心理まで多角的に描き出します。

「妻敵討」——つまり不倫相手を夫が討ち取ることが法的に認められていた制度——の実態と、その運用の現実を史料で追うと、江戸時代の道徳が表面上は厳格でも、実際にはさまざまな「折り合いのつけ方」があったことが見えてきます。同時に、制裁を逃れるための知恵と、それでも報われなかった人々の悲劇も浮かび上がります。本書にはさらに、近親相姦や心中といった周縁的なテーマについても史料に基づいた分析が展開されています。ぜひ本書で確かめてみてください。

歴史を通じて「人間の不変の部分」が見えた

この本を読んでから、江戸時代の歴史資料への見方が変わりました。記録に残された事件や制度の背後に、当事者たちの生の感情と葛藤があることを意識するようになったのです。

人間の欲望や孤独、禁止されたものへの引力——これらは江戸時代も現代も変わらないという実感は、歴史が単なる過去の記録ではなく「人間理解の鏡」であることを教えてくれます。時代を超えた人間の普遍性を発見したとき、歴史への関心が全く違う形を取り始めました。記録に残らない多くの人々の感情が、わずかな史料を通じて立ち上がってくる感覚は、読書の中でも格別の体験です。

近世史の専門家が史料から読み解く人間ドラマ

東京教育大学出身で日本近世史を専門とする氏家幹人が、江戸時代の不義密通という禁じられたテーマを史料に基づいて読み解いた一冊です。厳密な歴史学の視点と、人間ドラマとしての深みが共存する、選書メチエらしい知的な読書体験を提供してくれます。

この本を読まなければ、江戸時代を「別の時代の話」として距離を置いたまま、歴史が人間の感情に照射する光を見逃し続けていたと思います。時代を超えた人間の普遍性を発見するとき、歴史書の読み方が根本から変わっていきます。江戸の史料の中に息づく人間の姿が、今の自分に語りかけてくる感覚があります。

この本を手に入れる

不義密通: 禁じられた恋の江戸 (講談社選書メチエ 88) 氏家 幹人 / 講談社選書メチエ

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