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新書嫁レビュー ・ 約 3 分

中国はアメリカを超えない——その根拠が、経済データにある

「中国がアメリカを追い越す日が来る」と信じていた

2000年代から2010年代にかけて、「21世紀は中国の時代だ」という言説を繰り返し目にしてきました。GDPで日本を抜き、インフラを猛スピードで整備し、世界の工場として製造業を席巻する中国——そのまま伸び続ければいずれアメリカをも追い越す、という見方を漠然と信じていたのです。

その見方のせいで、アメリカ経済の実力をあまり深く考えてこなかったところがあります。「老いた大国が新興国に抜かれる」という歴史の法則のようなものが、なんとなく頭の中にありました。しかしそのわりには、実際のアメリカ経済が衰えた様子はなく、新しいテクノロジーの震源地としてシリコンバレーが君臨し続けている現実が引っかかっていました。

この本が、その違和感に明快な説明を与えてくれました。

新技術とビジネスモデルは、なぜアメリカからしか生まれないのか

本書が主張するのは、アメリカ経済には「新しいビジネスモデルと技術革新を生み出す構造的な優位性」があるということです。IT・AI・バイオなど、産業の未来を決める新技術は繰り返しアメリカから生まれ続けています。その背景にある大学・研究機関・ベンチャーキャピタルのエコシステムは、中国が投資を増やしても短期間では複製できない蓄積です。

一方で中国経済については、「製造業の移転」「バブル的な投資拡大」「人口動態の変化」といった構造的な課題が重なっているという分析がされています。高度成長を支えてきた要因が、成長とともに逆回転し始めているというのです。本書にはさらに、日本経済がこの米中対立の中でどのような立場に置かれるかについても詳しく論じられています。ぜひ本書で確かめてみてください。

「世界の行方」への視点が、少し変わった

この本を読んでから、経済ニュースの読み方が変わりました。以前は中国の経済指標が上がるたびに「やはり追い上げてくるな」と感じていましたが、本書を読んでからは「それはアメリカの構造的優位を変えるほどの変化なのか」という問いを立てるようになりました。

数字の大きさではなく、「どこで技術が生まれているか」「どこでビジネスモデルが設計されているか」という観点で世界経済を見ることが、より本質的な理解につながるのだという感覚を持てるようになりました。

「米中逆転」への期待が、実は根拠の薄い信仰だったと気づいた

本書を読んで最も驚いたのは、「中国がアメリカを追い越す」という言説が、いかに感情的な期待に支えられていたかを認識したことです。数字の大きさや成長率だけを見て「追い越しは時間の問題」と思っていましたが、新技術の発生源、制度の柔軟性、人材の流動性といった構造的な観点で比較すると、全く異なる絵が浮かび上がります。「大きくなること」と「強くなること」は違う——本書はその違いを経済データで示しています。

40年以上、株式と経済を分析してきた著者の見立て

ドイツ証券アドバイザーとして、また大和総研のチーフアナリストとして40年以上にわたって日米の株式市場と経済を分析してきた武者陵司だからこそ書ける、米中経済の構造的な違いの解説です。感情論や政治的な立場を排して、データと構造で論じています。

この本を読まなければ、「中国がアメリカを追い越す」という漠然とした信念を持ち続けていたと思います。

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