お米は日本と東アジアだけのものだと思っていた
米は日本や中国、東南アジアなど限られた地域で食べられる「アジアの主食」であり、世界全体から見れば小麦やトウモロコシの方が主流だ——そんな思い込みを持っていました。米について深く知る必要を感じなかったのも、「身近すぎて当たり前すぎる食べ物」という感覚があったからです。
でも実際には、米は世界中で驚くほど多様な品種と食べ方で栽培・利用されており、その文化的・生態的な豊かさは想像をはるかに超えていることを、この本で初めて知りました。「ただの主食」として見ていた米が、実は人類の食の歴史と文化の宝庫だったのです。
この本が、米への見方を根本から変えてくれました。
世界には何千種もの米があり、それぞれの文化がある
本書は、農業生物資源研究所に勤め、稲と米の多様性を研究してきた佐藤洋一郎が、世界の米の品種の多様性と、それぞれの地域での食文化を解説した一冊です。著者は東南アジアやアフリカなど各地でフィールドワークを行い、稲の起源から現代の品種改良まで幅広い知識を持つ専門家です。
世界にはジャポニカ種(日本型)とインディカ種(インド型)を中心に、数千種以上の栽培品種の米が存在します。日本人が普段食べるもちもちとした白米は世界的には少数派で、パラパラしたインディカ種の米が世界の生産量の大半を占めています。さらにアフリカには独自に栽培化されたアフリカ稲(グライモ)という全く別の種が存在し、色も形も味も全く異なります。
インドのビリヤニ、スペインのパエリア、イタリアのリゾット、タイのカオマンガイ——米を使った料理が各国でこれほど多様に発展しているのは、それぞれの品種と食文化が長い時間をかけて融合してきたからです。本書にはさらに、稲の遺伝的多様性の保全と、気候変動時代の食料安全保障への影響についても論じられています。ぜひ本書で確かめてみてください。
「食べる」という行為の背後に、壮大な歴史が見えた
この本を読んでから、日々の食事の中で米を見る目が変わりました。茶碗に盛られた白米の一粒一粒が、何千年もかけて人類が育んできた品種改良と農耕文化の結晶であるという感覚が生まれたのです。
食べることは、単なる栄養補給ではなく、人類の知恵と歴史を受け取る行為でもあることが、米という身近な食材を通じて実感できました。世界の米の多様性を知ることで、食文化への興味が広がりました。旅行先でその土地の米料理を食べるとき、その品種の歴史や背景を想像するようになりました。食事の豊かさが、こんな形で広がるとは思っていませんでした。
稲研究の専門家が語る「世界の米」の豊かさ
農業生物資源研究所で稲と米の多様性を長年研究してきた佐藤洋一郎が、世界各地の米の品種と食文化を解説した一冊です。フィールドワークに基づく実感ある記述が、「米」という身近な食材を全く新しい目で見るきっかけを与えてくれます。専門的でありながら読みやすく、食と農の両方への関心を育ててくれる稀有な一冊です。
この本を読まなければ、米を「ただの主食」として当たり前のように食べ続け、そこに宿る世界の豊かな文化と歴史を見逃したままだったと思います。身近なものを深く知ることで、日常がこれほど豊かになるとは思っていませんでした。