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新書嫁レビュー ・ 約 3 分

情報とは「知らせ」ではなく〈力〉だった——その正体を知った日

情報とは「やりとりされるデータ」だと思っていた

情報という言葉を、私はずっと、メールやニュースのように人から人へ受け渡される中身のことだと思っていました。多ければ便利、少なければ不便。その程度の理解で日々大量の情報に触れていたのです。けれど、いくら情報に囲まれていても、自分が本当に何を手にしているのかはよくわからないままで、便利さの実感の裏にずっと小さな心もとなさがありました。その正体を、春木良且さんの『情報って何だろう』が言い当ててくれました。情報とは単なる中身ではなく、目に見えない〈力〉そのものだったのです。誰がどう持つかで世界が動いてしまう、そういう性質を持ったものだったと知って、足元の見え方が変わりました。

二進法が三百年後に実用化された、という静かな衝撃

本書は、身近で具体的なエピソードから情報の本質へ近づいていきます。たとえば、コンピュータの根幹をなす二進法という考え方は、提唱されてからおよそ三百年もの時を経てようやく実用化されたという話。当時は何の役に立つのかもわからなかった抽象的な発想が、時代をまたいで世界を支える土台になった、という時間の奥行きに思わず引き込まれました。さらに本書には、一枚のポスターからピースサインが消されていたという出来事や、ある航空会社が座席予約システムでなぜ成功したのかといった話も登場します。どれも「これも情報の力なのか」と膝を打つような例ばかりで、情報が単なるデータの集まりではなく、人の選択や社会の形まで左右する〈力〉であることがじわじわと腑に落ちていきます。本書では、こうした具体例を入り口に、情報理論の祖シャノンの考え方や、うわさやガセネタといった社会的な情報の側面まで踏み込んで描かれています。その先は、ぜひ本書で確かめてみてください。

「情報疲れ」が「情報を見る目」に変わった

この本を読んでから、情報との距離の取り方が変わりました。以前はSNSやニュースの洪水を前に、ただ流されて疲れるばかりでした。今は、ある情報が流れてきたとき「これは誰にとって力になり、誰にとって不都合なのか」と一拍置いて考えるようになりました。価格の表示ひとつ、見出しの付け方ひとつにも、受け手を動かそうとする力が働いていることが見えてきたのです。買い物のときに目に飛び込む「期間限定」の文字や、同じ出来事を伝えるはずの記事ごとに違う見出しの温度差。以前なら素通りしていたそうした細部に、誰かの意図と力の働きを感じ取れるようになりました。情報を受け取る側から、情報の働き方を眺める側へ。その視点を持てただけで、同じニュースを見ても疲れではなく面白さを感じられるようになりました。流れてくるものに振り回されるのではなく、流れそのものの形を観察する。そんな小さな主導権を取り戻せた気がしています。

知らないままなら、力の渦に流されるだけだった

この本に出会わなければ、私は情報をただの便利な中身と思い込んだまま、その力の渦にただ流されていたはずです。著者の春木良且さんは情報の専門家で、本書はその内容が筑摩書房の高校国語教科書にも採録されたほど、平易さと深さを両立させた一冊です。中学・高校生に向けて書かれた岩波ジュニア新書でありながら、情報という言葉を日常的に使うすべての大人にとっても、足元を照らし直してくれる本だと感じました。読み始めは少し堅く感じるかもしれませんが、中盤からの引き込まれ方は格別です。

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情報って何だろう (岩波ジュニア新書 457) 春木 良且 / 岩波ジュニア新書

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