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新書嫁レビュー ・ 約 3 分

「EUは国家の上に立つ超国家組織だ」という思い込みが、EUが国家主権を超えながらも国家を必要とする独自の統治論理を見えなくしていた

「EUとはヨーロッパの国々が主権を譲渡して作った超国家的な政府組織であり、加盟国は決定に従う義務がある」とずっと思っていた

EUといえば、ヨーロッパ各国が主権の一部をまとめて「より大きな政府」を作った組織——そういう理解をしていました。ユーロという共通通貨、シェンゲン協定による国境の廃止、EU法の優位性——これらはEUが「ヨーロッパ合衆国」に向かって進化していく過程として受け取っていました。国家主権とEU権限は「ゼロサムの取り合い」であり、EUが強くなるほど加盟国は弱くなるという感覚がありました。

でも、ブレグジットで離脱したイギリスや、EUの決定に反発し続けるハンガリー・ポーランドを見るとき、「EUはなぜ加盟国を強制できないのか」「EUの統治はどのような論理で動いているのか」という問いへの答えが、うまく見えてきませんでした。

庄司克宏著『欧州連合——統治の論理とゆくえ』を読んで、その問いへの答えが見えてきました。

EUは「国家主権 vs 超国家権威」のゼロサムではなく、国家と超国家が機能分担する「多層統治」の論理で動いていた

著者が本書で示す核心は、EUが単純に国家の上に立つ超国家政府ではなく、加盟国・EU機関・地域が異なる政策領域で役割を分担する「多層統治(マルチレベル・ガバナンス)」という独自の論理で機能しているという事実です。EUは個別の問題——域内市場の統合、通貨の共通化、環境基準の統一——を一つひとつ解決することによって、その統治体としての実質を強化してきました。

特に印象的なのは、EU法の優位性が国内法裁判所によって担保されているという仕組みです。EUには加盟国を直接強制する執行機関がないにもかかわらず、EU法が国内法に優越するのは、加盟国の裁判所がEU法を適用するという「底からの統合」によって実現しています。EUは「上から命令する政府」ではなく「各国の法体系の中に浸透した規範」として機能しているという認識は、EUの統治の本質を鮮明に示します。本書にはさらに、ユーロの論理・EU市民権・安全保障戦略の構造が詳しく描かれています。ぜひ本書でその全貌を確かめてみてください。

EUについてのニュースが、「国家の衝突」ではなく「統治の論理の問題」として読めるようになった

読む前と後で、EUをめぐるニュースへの向き合い方が変わりました。以前はブレグジットやEUと加盟国の対立を「国家主権 vs EU」という単純な構図で受け取っていました。でも今は、「その問題はEUの多層統治のどの層で生じているのか」「どの機関がどのような権限を持ち、どこに摩擦が起きているのか」という問いを持てるようになりました。

具体的には、ハンガリーやポーランドが「法の支配」を巡ってEUと対立するニュースを見るとき、「EUの統治の正統性はどこから来るのか」という問いが浮かびます。また、ユーロの動向を見るとき、共通通貨が財政主権を持ち続ける加盟国の間でどのような緊張を生むかが、理解できる地図として頭に入っています。EUの仕組みを知ることで、現代の国際政治を読む解像度が一段上がりました。

慶應義塾大学法科大学院教授・日本EU学会理事長がEUの統治論理を体系的に解明した

庄司克宏(1957年生まれ)は慶應義塾大学大学院法学研究科でEU法を専攻し、ケンブリッジ大学・欧州大学院大学での客員研究を経て、慶應義塾大学法科大学院教授・日本EU学会理事長を歴任したEU法の第一人者です。法律・政治・経済が交差するEUという統治体を専門的に研究し続けてきた著者だからこそ、本書では制度の表面だけでなく「なぜこの仕組みが成立したのか」という論理の深部まで丁寧に解説されています。

この本を読まなければ、EUを国家主権を飲み込む超国家政府として理解したまま、多層統治という独自の論理でEUが機能している実像と向き合う機会を持てないままでいたでしょう。

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欧州連合: 統治の論理とゆくえ (岩波新書 新赤版 1099) 庄司 克宏 / 岩波新書 新赤版

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