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新書嫁レビュー ・ 約 3 分

「経営者は生まれながらの器で決まる」という思い込みが、経営者能力が体系的に分析・育成できるという事実を見えなくしていた

「優れた経営者は生まれながらのカリスマや器を持った人であり、普通の人が後天的に身につけられるものではない」とずっと思っていた

名経営者の話を聞くたびに「この人は特別な人物だ」という感覚がありました。雪印や三菱自動車の不祥事で経営陣が批判される一方、ヤマト運輸や日産の経営者が賞賛されるのを見ても、その差は個人の人格や才能によるものだという理解でいました。経営者の「良し悪し」は感覚的にわかるが、体系的に分析したり測定したりできるものではないという前提がありました。

でも、「なぜあの組織は機能して、なぜこの組織は崩壊したのか」という問いが、組織や仕事に関わるたびに浮かんできました。リーダーシップの差が組織の運命を変える構造を、体系的に理解する言葉を持っていませんでした。

大沢武志著『経営者の条件』を読んで、その構造が見えてきました。

経営者能力は心理学的に体系化できる——リーダーシップの四機能という枠組み

著者が本書で示す核心は、経営者に求められる能力が「感覚や才能」ではなく、心理学的研究の成果をもとに体系化・測定できるという事実です。リーダーシップの四機能として、著者は「目標達成に向けたメンバーの役割遂行を要望する機能」「メンバーを支持する機能」「仕事や組織に関する情報を提供する機能」「メンバーから能力的・人間的に信頼される機能」を挙げます。

この四機能の欠落や偏りが、組織の機能不全をどのように引き起こすかという分析は、企業不祥事と名経営者の成功を同じ枠組みで理解することを可能にします。また、オーナー経営者とサラリーマン経営者の役割の違い、経営者能力の測定方法、経営と倫理の関係——本書は「経営者」という職務を心理学的・組織論的に解剖します。感覚的な「器の大きさ」の話ではなく、測定可能で育成可能な能力として経営者を論じる視点は、現代の組織を考える上で基本的な枠組みを与えてくれます。本書にはさらに、日本的組織の特性と経営者の関係、経営の継承と引退の問題が詳しく語られています。ぜひ本書でその全貌を確かめてみてください。

組織の問題を見るときの視点が根底から変わった

読む前と後で、組織やリーダーに対する見方が変わりました。以前は「あの上司はダメだ」「この会社は雰囲気が悪い」という感覚的な評価で止まっていました。でも今は、リーダーシップの四機能のどこが欠けているのかという分析の枠組みを持つようになりました。

具体的には、自分が属する組織でコミュニケーションが滞るとき、「情報提供の機能が機能していないのではないか」と問うようになりました。また、上司への「信頼できない」という感覚を、「人間的な信頼と能力的な信頼のどちらが欠けているのか」という問いで整理できるようになりました。感覚的な評価を言語化することで、問題の所在を見えやすくし、改善のための働きかけを考えられるようになりました。組織論の枠組みを持つことが、日常の職場での行動に直接繋がる体験が生まれました。

産業・組織心理学の専門家が、経営者能力を科学的に解明した

大沢武志は大阪産業大学経営学部教授として産業・組織心理学を専門とし、リーダーシップ研究と人事評価の実証研究に長年取り組んできた研究者です。企業の経営者評価や人材育成の実務にも関わった著者の視点は、心理学的な実証研究の厳密さと、現場の実践的な知見が融合したものとなっています。本書は経営者論の入門書として読みやすく、組織を理解する枠組みを提供してくれます。

この本を読まなければ、経営者の優劣を個人の器や才能の問題として感覚的に評価するまま、リーダーシップが体系的に分析・育成できるという事実と向き合う機会を持てないままでいたでしょう。

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経営者の条件 大沢 武志 / 岩波書店

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