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新書嫁レビュー ・ 約 3 分

「環境保護と経済成長はトレードオフだ」という思い込みが、ゼロエミッションという発想を見えなくしていた

「環境を守るためには経済成長を犠牲にしなければならない、これは宿命的なトレードオフだ」とずっと思っていた

環境問題に関心を持ちながらも、心の底では「環境保護とは経済の足を引っ張ること」という感覚がありました。工場の排出を規制すれば生産コストが上がり、電気自動車に転換すれば既存産業が苦しむ——環境と経済はどこかで必ず競合するものだという前提が自分の中にありました。だから「持続可能な社会」という言葉を聞くたびに、それは豊かさを諦める話ではないかという漠然とした疑念がありました。

でも、廃棄物をゼロにするという発想が「コスト削減」でもあり得るという話を聞いたとき、自分の前提が揺らぎました。廃棄物とは何か、経済のモデルを変えれば「捨てる」という行為自体を産業構造から消せるのではないか——その問いがうまく展開できないままでいました。

三橋規宏著『ゼロエミッションと日本経済』を読んで、その問いの答えが見えました。

ある産業の廃棄物が別の産業の原料になる——「ゼロエミッション」という転換

本書が示すのは、国連大学が提唱した「ゼロエミッション」という概念が、環境と経済の関係を根本から問い直す発想だということです。廃棄物を減らすのではなく、廃棄物が出ない産業構造を設計する。ある工場の副産物を別の工場の原料として使い回すことで、「廃棄物」という概念そのものを経済システムから消し去る——そのビジョンは、環境保護を「規制」として捉える従来の発想を超えています。

著者は日本経済新聞の記者・論説副主幹として長年経済を見続けた後、地球環境問題の深刻さに衝撃を受けてこの分野に転じました。そのジャーナリストとしての視点が、ゼロエミッションを思想の話ではなく産業と経済の現実の話として届けます。本書にはさらに、日本企業が取り組む具体的な事例と環境と経済が調和する社会の展望が展開されます。ぜひ本書でその全貌を確かめてみてください。

「環境問題」への向き合い方が変わった

読む前と後で、環境問題をニュースで見るときの切り取り方が変わりました。以前は環境規制のニュースを「産業への制約」として受け取っていました。でも今は、「この規制が新しい産業を生む契機になるかどうか」という問いを持てるようになりました。

具体的には、企業のサステナビリティ報告書や環境投資のニュースを見るとき、「これはコストを増やす義務なのか、それとも廃棄物を資源に変えるビジネスモデルへの転換なのか」という見方ができるようになりました。ゼロエミッションという視点は、環境への関心を義務感から能動的な設計の問いへと変えてくれます。日本の製造業が持つ精緻な技術力が、廃棄物ゼロという高いハードルを超えるための強みになるとわかってから、環境と経済の関係への見方が変わりました。

第1回ゼロエミッション賞受賞のジャーナリストが、経済と環境の統合を説いた

三橋規宏(慶應義塾大学経済学部卒)は日本経済新聞の論説副主幹として財政金融政策を長年担当した後、環境経済学の第一人者として千葉商科大学政策情報学部名誉教授を務めました。2001年に第1回ゼロエミッション賞を受賞し、経済界と環境NGOを結ぶ活動を推進してきた著者だからこそ届けられる、実践的な視点が本書の核心です。

この本を読まなければ、「環境か経済か」という二項対立の枠の外にある発想を知ることなく、環境問題を「犠牲とコスト」の話として受け取り続けていたでしょう。

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ゼロエミッションと日本経済 (岩波新書 新赤版 491) 三橋 規宏 / 岩波新書 新赤版

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