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新書嫁レビュー ・ 約 3 分

「情報化・消費社会は豊かさをもたらした進歩だ」という楽観が、その先にある臨界を見えなくしていた

「情報化と消費社会の発展は、人類を豊かにする進歩の道筋だ」とずっと思っていた

スマートフォンに情報があふれ、欲しいものはいつでも手に入る——情報化と消費社会の発展は、生活を便利にし豊かにする進歩だと思っていました。資本主義は問題を抱えながらも、消費の拡大と技術の発展によって前に進んでいけるのだという楽観的な見通しがありました。環境問題や格差の問題は解決すべき課題ではあるけれど、それもやがて豊かさが広がることで解消される方向にあると感じていました。

でも、豊かになれば問題が解決するはずなのに、なぜ豊かさが増すほど不安も増すのかという矛盾が、どこかで引っかかっていました。消費を繰り返しても満たされない感覚、環境問題がむしろ悪化しているという現実——その矛盾の構造が、言葉にならないままでいました。

見田宗介著『現代社会の理論』を読んで、その矛盾が問うべき問いだったとわかりました。

「ゆたかな社会」は自らの外部に新たな限界を生み出していた

著者が本書で示す現代社会の理論の核心は、情報化・消費化社会が古い資本主義の矛盾——恐慌と戦争——をいったん克服した一方で、新たな外部の臨界を生み出しているという洞察です。環境・資源の臨界、そして南北の貧困という二つの限界は、この「ゆたかな社会」が自らを維持するために必然的に生み出しているものでした。

消費社会は自ら需要を創り出す自己準拠的なシステムとして、経済的な恐慌を乗り越えた。しかしそのシステムが拡大するほど、環境を破壊し、世界の南半球の貧困を深める構造的な圧力が増していく。本書にはさらに、この臨界を超えた先に「自由な社会」の可能性を開くための情報化・消費化の転回について、著者の展望が示されます。ぜひ本書でその全貌を確かめてみてください。

「豊かさ」への問い方が変わった

読む前と後で、日常の消費行動への意識が変わりました。以前は「欲しいものが手に入る社会」を素直に豊かさとして受け取っていました。でも今は、「その豊かさは何の上に成り立っているか」という問いが浮かぶようになりました。

具体的には、新しい商品を買おうとするとき、「これは本当に自分が必要なものか、それともシステムが生み出した需要か」という問いを持つようになりました。情報化社会が発達するほど欲望も精巧に作られる——消費が自己目的化していく構造に気づいてから、広告やSNSの「欲しい気持ち」を少し距離を置いて見られるようになりました。「豊かさ」という言葉の意味が、物の多さからどう生きるかという問いにシフトしました。

また、気候変動や南北格差についてのニュースを見るとき、「他人ごと」でなくなりました。消費社会の恩恵を受けている自分自身が、その臨界を生み出す構造の一部であるという認識は、行動を変える最初の一歩を後押しします。豊かさを問い直すことは、社会の見え方を変えるだけでなく、日常の選択を変える力になりました。

東京大学名誉教授の社会学者が、現代社会の構造を見通した

見田宗介(1937年生まれ)は東京大学大学院総合文化研究科教授を経て同大名誉教授となった、日本を代表する社会学者です。現代社会論・比較社会学・文化の社会学を専門とし、「まなざしの地獄」「時間の比較社会学」などの著作で社会の深層を問い続けてきた著者の、代表的な一冊です。精緻な理論と読みやすい文体が両立した本書は、消費社会論の入門として今も読み継がれています。

この本を読まなければ、「情報化・消費社会は進歩だ」という楽観の裏に隠れた構造的な限界を見落とし、豊かさという言葉を問い直すことなく過ごしていたでしょう。

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現代社会の理論: 情報化・消費化社会の現在と未来 (岩波新書 新赤版 465) 見田 宗介 / 岩波新書 新赤版

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