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新書嫁レビュー ・ 約 3 分

「子どもは未完成な存在だ」という前提が、子どもの内側を見えなくしていた

「子どもはまだ未完成な存在だ」という大人の目線を疑ったことがなかった

子どもとは大人になる途中の存在であり、知識も経験もまだ足りない、成長の過程にある未完成な人間——そういう見方を当たり前のように持ち続けていました。だから大人は子どもを「早く育てる」ことに一生懸命で、できていないことを補ってあげることが愛情だと思っていました。

でも、その前提を持ったまま子どもと接していると、どこかしっくりこないことがありました。子どもが何かに没頭しているとき、その表情の深さが「未完成な存在」の顔ではない。秘密を抱えているとき、その内側には何かとてつもなく大きなものがある気がする。でもそれが何なのか、うまく言えないまま長い間過ごしていました。

河合隼雄著『子どもの宇宙』を読んで、その「何か」にようやく言葉が与えられました。

ひとりひとりの子どもの内面に、広大な宇宙がある

本書の冒頭近くで河合隼雄はこう述べます。「大人たちは、子どもの姿の小ささに惑わされて、ついその広大な宇宙の存在を忘れてしまう」。そして、「大人たちは小さい子どもを早く大きくしようと焦るあまり、子どもたちのなかにある広大な宇宙を歪曲してしまったり、回復困難なほどに破壊したりする」と続きます。

この指摘は、登校拒否・家出という具体的な症例から始まり、児童文学の読解を通じて深められていきます。「家出願望」「秘密を持つこと」「老人や動物との関係」——これらが子どもの心の成長においてどんな意味を持つかを、河合は臨床心理士として長年積み重ねた観察から論じます。本書にはさらに、「死」「時空」「異性」というテーマを通じて子どもの心の構造を探る章が続きます。ぜひ本書でその全貌を確かめてみてください。

子どもとの「距離感」が変わった

読む前と後で、子どもに接するときの姿勢が変わりました。以前は「何を教えるか」「何を直すか」という視点が先に立っていました。でも今は、「この子の内側にどんな世界があるか」という問いを先に立てるようになりました。

子どもが突然黙り込んだり、訳のわからないことに熱中したりするとき、以前はそれを「指導する」対象として見ていました。今は、その沈黙や没頭の中に無理に入ろうとしない。子どもの宇宙に土足で踏み込まないことが、関わりの第一歩だという感覚が生まれました。

「大人になるということは、子どもたちのもつこのような素晴らしい宇宙の存在を、少しずつ忘れ去ってゆく過程なのかとさえ思う」という著者の言葉は、読んだ後も長く残ります。子どもと関わる全ての人に、この問いかけは届くはずです。

子どもを「育てる対象」としてしか見ていなかった自分への問いかけ

河合隼雄(1928-2007)はユング心理学を日本に導入した臨床心理学者であり、後に文化庁長官も務めた日本の精神文化を代表する知識人です。長年にわたる心理臨床の実践と、膨大な神話・昔話・文学の読解から生まれた本書は、心理学の専門書を超えて多くの読者に読み継がれています。

「子どもは未完成だ」という思い込みを持ったまま接し続けていたら、目の前の子どもの内側に広がる世界を見落としていました。

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子どもの宇宙 (岩波新書 黄版 386) 河合 隼雄 / 岩波新書 黄版

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