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新書嫁レビュー ・ 約 3 分

「語学の才能がある人だけが外国語を習得できる」という思い込みを崩した一冊

「語学の才能がある人は、楽に外国語が身につく」と思い込んでいた

外国語学習が続かないとき、自分に才能がないからだと思っていました。ネイティブのように話せる人は、もともと耳がいいか、幼い頃に環境に恵まれたか、そういう特別な条件を持った人だと。自分にはそれがないから、いくら努力しても限界があると、半ば諦めていました。

その思い込みを抱えたまま語学参考書を手にするたびに、どこかしっくりこないものがありました。教材を変えても方法を変えても、根本的な問題が解消されない感覚です。才能の問題なのか方法の問題なのか、判断できないまま学習と挫折を繰り返していました。何年もそれを繰り返しながら、「やはり自分には無理だ」という結論に近づいていくような感覚がありました。

千野栄一著『外国語上達法』を読んで、その迷いの構造が整理されました。

著者は「語学が苦手だ」と言いながら、複数言語に堪能だった

本書で著者・千野栄一が最初に述べることは「私は語学が苦手である」という言葉です。スラヴ語を専門とする東京外国語大学教授でありながら、そう言い切る。この出発点が、本書全体の説得力の源です。

千野が伝えるのは、才能のある人の成功法ではなく、「語学が苦手だからこそわかった、苦手な人のための方法」です。目的を持つこと、継続の仕組みを作ること、文法の正確な理解を積み重ねること、そして語彙の優先順位を意識すること——これらはどれも、才能とは無関係に実行できるものです。

特に印象的なのは「レアリア」という概念です。言語は単なる記号体系ではなく、その背景にある文化・社会・歴史と一体になっています。言語を「コード」として学ぶのではなく、その言語が生きている世界への入り口として学ぶとき、習得の質が変わると千野は言います。本書にはさらに、辞書の選び方、教師に何を求めるべきか、挫折したときの立て直し方が、著者の体験とともに語られています。ぜひ本書でその具体論を確かめてみてください。

「努力が続かないのは才能のせい」という言い訳が消えた

読む前と後で、語学学習への向き合い方が変わりました。続かなかったのは才能のせいではなく、目的と方法が曖昧だったことが原因だったと気づきました。「いつかネイティブのように話せるようになりたい」という漠然とした目標では、毎日の学習を支える動機にならない。

「何のために学ぶか」をはっきりさせることが、最初の一歩でした。旅行で使いたいのか、読みたい本があるのか、友人と話したいのか。目的が具体的になると、必要な語彙も方法も絞られてきます。その視点で教材を見直すと、以前よりずっと迷いなく進められるようになりました。

「まるで霧が晴れるように、外国語習得への足掛かりが見えてくる」という読者の声は、読んでみてまさにその通りだと実感しました。

「才能がない」と思いながら語学から逃げ続けていた理由がわかった

千野栄一(1932-1997)は東京外国語大学教授として言語学・スラヴ語学を専門とし、日本の言語学界に多大な貢献をした研究者です。語学の「不得意な専門家」だからこそ語れる学習論の説得力は、才能論や根性論とは全く異なる地平にあります。

「語学の才能がない」という思い込みで自分に上限を設けていた時間を、もっと早く手放したかったと思います。

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外国語上達法 (岩波新書 黄版 329) 千野 栄一 / 岩波新書 黄版

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