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新書嫁レビュー ・ 約 2 分

バナナが安い理由を「生産技術の進歩」だと思い込んでいた

バナナが安いのは「農業の発展のおかげ」だと思っていた

スーパーに行くと、バナナは一房100円台で買えることがあります。ずっとそれを、農業技術の進歩と大量生産の効率化によって実現されたことだと思っていました。「安くておいしい」という消費者の恩恵の裏側に、どんな構造が存在するかを、具体的に考えたことがありませんでした。その「安さ」がしっくりこなかったのは、何かを払わずに何かを得ているような感覚が、どこかにあったからです。

その感覚の正体を解き明かしてくれたのが、鶴見良行著『バナナと日本人』でした。

日本の食卓とフィリピンの農園をつなぐ「搾取の連鎖」

本書が描くのは、日本のスーパーに並ぶバナナの9割を生産するミンダナオ島で起きていることです。多国籍企業は現地農家と圧倒的に有利な契約を結び、バナナの利益は農家にほとんど還元されません。農家は農園開発のための借金を抱え、バナナ以外の作物に切り替えることもできない——そういう構造の中で、日本人の食卓に「安くて甘いバナナ」が届いています。

本書は単なる農業問題の記録ではなく、明治以来の日本と東南アジアの歪んだ関係史にまで視野を広げます。日本の消費文化と遠い国の労働者の生活が、どのようにつながっているかを具体的な事例で示す、フードポリティクスの先駆的著作です。本書にはさらに、台湾産から比国産へのバナナ転換の裏に何があったかが詳しく描かれており、ぜひ本書で確かめてみてください。

スーパーの棚が違って見えてきた

この本を読んでから、スーパーの棚を見るとき「この安さは誰が支払っているのか」という問いが浮かぶようになりました。以前はバナナの値段を「市場の結果」として受け取っていましたが、今はその背後に農園労働者の賃金、多国籍企業との契約、土地の囲い込みという構造が透けて見えます。「安くておいしい」という消費の快楽の背後にある問いを、日常的に持ち続けるようになりました。

食卓の政治学を切り開いた記者・研究者

鶴見良行は東南アジアの農村や漁村に長年通い続け、日本と東南アジアの経済的・歴史的関係を現場から記録し続けた研究者です。「バナナが安いのは農業の発展のおかげ」という思い込みを持ったまま食べ続けていたら、その安さを支えている構造は、今も見えないままでした。

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バナナと日本人: フィリピン農園と食卓のあいだ (岩波新書 黄版 199) 鶴見 良行 / 岩波新書 黄版

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