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新書嫁レビュー ・ 約 3 分

「軍部が暴走した」では説明できない昭和史の怖さ

昭和の戦争は「一部の軍人が暴走した結果」だと思っていた

学校で「昭和史」を学んだとき、戦争への道は「軍部の独走」という言葉で説明されることが多かった。一部の過激な軍人が民主的な政府を乗っ取り、国民は止められないまま戦争に巻き込まれた——そういう構図で理解していました。しかしそれなら、なぜ民主主義の手続きを経て軍拡が進んだのか。なぜ多くの知識人・マスコミ・国民が戦争を支持したのか。「一部の悪人が暴走した」では、あれほど大規模な戦争が起きた理由が説明できない、という違和感がずっとありました。

1920年代の経済危機が、軍国主義への道を整えた

遠山・今井・藤原の三人が描く昭和史は、政治の表面ではなく経済・社会構造の変動に着目しています。1929年の世界恐慌が日本農村を直撃し、農村の貧困が軍への人材供給と支持基盤を作りました。財閥と政党の癒着に対する民衆の不満が、「腐敗した政治家より清廉な軍人を」という空気を醸成しました。

本書が出版された1955年は、戦争終結からわずか10年です。当事者の記憶が生きている時代に、「なぜあの戦争は起きたのか」を三人の歴史家が資料に基づいて記述したこの書物は、出版直後に「昭和史論争」を引き起こしました。「人間が描かれていない」という批判と、「構造を解明している」という評価が対立し、昭和史をどう書くべきかという議論になりました。その論争の中身は、ぜひ本書と合わせて考えてみてください。

「どうしてこうなったのか」と問えるようになった

この本を読んでから、戦争を「悪者の仕業」として処理することへの抵抗感が強まりました。昭和の軍国主義は、特別な悪人が計画したものではなく、経済危機・農村の疲弊・政治不信・ナショナリズムの高まりといった構造的条件の積み重なりの中から生まれました。

「あの時代だからそうなった」という距離の置き方もまた危険だと感じます。経済的不安が社会に広がるとき、スケープゴートが求められ、「強いリーダー」への期待が高まる——そのパターンは普遍的です。昭和史を「過去の特殊な出来事」ではなく「今も起きうる構造」として読む習慣が、この本を読んでから生まれました。

出版と同時に日本の歴史学を揺るがした問題作

本書の著者三人は、いずれも戦後日本の歴史学を牽引した研究者です。遠山茂樹(1914〜2011年)は横浜市立大学名誉教授で明治維新研究の権威、今井清一(1924〜2010年)は横浜市立大学教授で戦後政治史の専門家、藤原彰(1922〜2003年)は一橋大学教授で日本軍の研究で知られます。1955年の初版刊行後、昭和史論争を引き起こした歴史的な書物であり、以来70年にわたって日本の近現代史教育の出発点とされてきました。

この本を読まなければ、昭和の戦争を「一部の軍人の暴走」として片付け、構造的な原因を問えないままでいたはずです。歴史の中に「なぜこうなったのか」を問う視点は、今日の社会を見る目にもなります。

遠山茂樹・今井清一・藤原彰著『昭和史』、購入はこちらから。

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