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新書嫁レビュー ・ 約 3 分

イギリスの名門校では、自由と厳しさを同時に教えていた

厳しい教育か自由な教育か、どちらかを選ぶものだと思っていた

日本の学校教育について考えるとき、「厳しく規律を教えるか」「個性と自由を伸ばすか」という二択で議論されることが多い。詰め込み教育か自由教育か、管理か放任か——その対立構造を当然のものとして受け入れてきました。しかし、世界最高水準の人材を輩出してきたイギリスのパブリック・スクールは、この二択を解体するような教育観を持っていました。自由と規律は対立するものではなく、一体として育てられるものだということを、この本が静かに教えてくれます。

厳しい規律の中でこそ、本物の自由が育つ

池田潔が体験したイギリスのパブリック・スクール(リース校)は、物質的に苛薄な環境でした。共同生活、不快な規則、体罰もあった時代の厳格な規律——日本の感覚では「管理教育」に映るかもしれません。しかし著者が気づいたのは、その厳しさが「外からの強制」ではなく「自己規律の訓練」として機能していたことです。

規則を守るのは見張られているからではない。共同体の秩序を自分が担っているという感覚から守る。放課後の自由時間には、誰に指示されるでもなく自分で活動を選んで没頭する。この「規律によって培われた自律」こそが、パブリック・スクールがオックスブリッジへ、そして社会の各分野のリーダーへと人を育てた核心でした。本書はさらに、ケンブリッジ大学での自由な学問生活の体験と、日本の教育との比較を通じてこの問いを展開しています。ぜひ本書で確かめてみてください。

「自由にしていいよ」では、自由は育たないとわかった

この本を読んでから、「自由を与えること」と「自由を育てること」は別のことだと感じるようになりました。規律もなく「好きにしなさい」と言われても、何をすべきかわからない。逆に、意味を理解した規律の中で動く経験を積んだとき、初めて「本当にしたいこと」が見えてくる。

職場でも同じことを感じます。ルールのない組織では、かえって何もできない。明確な規律と期待値の中に置かれることで、その枠の内側で自分の判断を使う練習ができる。「管理か自由か」ではなく「何のための規律か」という問いが立てられるようになったのは、この本を読んでからでした。1949年に書かれた体験記が、教育論としてではなく自分の日常の問いとして届いたことが、この本の力だと思います。

三井財閥の血脈が11年間の英国留学で学んだこと

池田潔(1903〜1990年)は東京生まれ。日本銀行総裁・三井財閥の最高指導者を務めた池田成彬の次男として生まれ、17歳でイギリスに渡り、パブリック・スクールのリース校とケンブリッジ大学、ハイデルベルク大学で11年間を過ごした国際教養人です。慶應義塾大学法学部教授として教鞭をとる傍ら、この体験記を1949年に発表しました。戦後の日本の教育論に大きな影響を与え、今日まで読み継がれる名著です。

この本を読まなければ、「厳しさか自由か」という二択で教育を考え続け、その二つが一体として機能しうる可能性を見逃していたはずです。自由とは規律の向こう側にある、という逆説的な真実が静かに刻まれた一冊です。

池田潔著『自由と規律』、購入はこちらから。

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