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新書嫁レビュー ・ 約 3 分

時間を節約するほど、時間が消えていく。半世紀前に書かれた現代人への診断書

時間を節約すればするほど、なぜか時間が消えていく

効率よく生きれば生きるほど、豊かな時間が手に入る。そう信じてきました。無駄をなくし、スケジュールを最適化し、隙間時間も活用する。それが「賢い生き方」だと思っていたし、だからこそ忙しいのに何かが足りないというあの感覚を、うまく説明できないでいました。時間はあるはずなのに、誰かといる時間も、ぼんやりする時間も、気づけばなくなっている。その違和感の正体を、この本はずっと前から知っていました。

「時間泥棒」は、善意のふりをしてやってくる

物語の舞台は、ある街の円形劇場跡に住みついた少女モモをめぐる世界です。ある日から街に「灰色の男たち」が現れ、人々に時間の節約を勧め始めます。「今すぐ親友と話す時間を貯蓄すれば、いつかもっと豊かになれる」という言葉で。

人々は忠告に従い、効率的になっていきました。会話を短くし、無駄を省き、老いた親の話を聞く時間も省略した。床屋のフシオという男は、客と話すのが好きで、それが生きがいでした。でも灰色の男に「その雑談の時間を節約すれば、もっと稼げる」と説得されてから、次第に無口になり、店から笑いが消えていきました。節約したはずの時間は、どこにも存在しなくなっていたのです。

灰色の男たちが何者なのか、盗まれた時間はどこへ行くのか——その核心については、ぜひ本書で確かめてみてください。エンデが用意した答えは、読んだ後しばらく頭を離れません。

「急いでいるのに豊かでない」という感覚の正体がわかった

この本を読んでから、自分の時間の使い方が変わりました。以前は友人との食事中もスマートフォンを手放せず、「この時間に返信しておけば後が楽になる」と思っていました。でも今は、それが灰色の男たちに時間を差し出す行為だとわかります。テーブルの向かいにいる人との時間は、節約すれば増えるのではなく、削ればそのまま消えます。

朝、何もせずに窓の外を5分眺める、というだけのことが、以前はひどく無駄に感じられました。今は、それが「自分の時間を守る」行為だとわかります。エンデが1973年に書いたこの物語が、半世紀後のスマートフォン時代にここまで鮮明に刺さるのは、「時間を貨幣として扱う社会」という構造が何も変わっていないからです。忙しいのに虚しいという矛盾が、なぜ起きるのかがようやく腑に落ちました。子どもの頃に読んでいたとしても、きっと今この年齢で読むほどには響かなかったはずです。

児童文学という形をとった、大人への問い

父がシュールレアリスム画家エドガー・エンデという芸術的な家庭に育ち、俳優・詩人・劇作家として活動を続けたミヒャエル・エンデは、1961年に『ジム・ボタンの機関車大旅行』でドイツ児童文学賞を受賞し、1973年にイタリア滞在中に『モモ』を完成させました。翌1974年、同賞を二度目の受賞という快挙を成し遂げています。

子どもに向けた物語の皮をまとっているのは、現代の大人が最も目を背けたい問いを届けるためだったのかもしれません。「自分は時間を正しく使えている」と思っている人こそ、一度この本を読んでほしいと思います。この本を読まなければ、自分が何を差し出しながら生きているかに、一生気づかなかったはずです。1973年に書かれた言葉が、今この瞬間の自分に届いてくる——それがエンデという作家の、そしてこの物語の、本当の力だと思います。

ミヒャエル・エンデ著『モモ』、購入はこちらから。

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モモ (岩波少年文庫(127)) ミヒャエル・エンデ, 大島 かおり / 岩波書店

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