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新書嫁レビュー ・ 約 3 分

この世界の材料は、たった2種類しかなかった

物質の世界は、無数の素材でできていると思っていた

金属、ガラス、水、空気。世界はとてつもなく多様な材料でできていて、それを一つひとつ覚えていくのが理科なのだと、私は長いあいだ思っていました。量子力学と聞くと、難解な数式が並ぶ天才たちの専門領域で、自分の日常とは無縁の話だと決めつけてもいました。でも、そう思っていると、超伝導や超流動といった言葉をニュースで耳にするたびに、「すごいらしいけれど何がすごいのか分からない」というもやもやが残り続けたのです。その霧を一気に晴らしてくれたのが、森弘之さんの『2つの粒子で世界がわかる 量子力学から見た物質と力』でした。

すべての粒子は、たった2つの種類に分けられる

本書が示すのは、驚くほどシンプルな見取り図です。この世のあらゆる粒子は、「ボーズ粒子」と「フェルミ粒子」という二つのタイプのどちらかに分類できる、というのです。性格はまるで正反対で、フェルミ粒子は互いに同じ場所に重なることを嫌い、それが物質に「形」と「硬さ」を与えています。一方、ボーズ粒子は平気で同じ状態に折り重なることができ、その性質がレーザーのような現象を生み出します。著者はこの二つの違いを軸に、なぜ物に手が触れられるのか、なぜ電気が流れるのかを解きほぐしていきます。そして本書の後半では、ミクロでしか起きないはずの量子現象が、超流動や超伝導という目に見える形で現れる仕組みまで描かれます。たとえば電子はフェルミ粒子でありながら、ある条件で対になるとボーズ粒子のようにふるまい、抵抗ゼロで電気を流す——そんな性格の反転が、目に見える現象として立ち現れるのです。アインシュタインやパウリといった天才たちがこの二種類の粒子をどう突き止めていったかも語られ、その先のミクロから宇宙へと広がる景色は、ぜひ本書で確かめてみてください。

コップを置く何気ない動作が、物理の話に見えてきた

この本を読んでから、当たり前の日常が違って見えるようになりました。机にコップを置いたとき、コップが机をすり抜けないのは、フェルミ粒子が互いに重なるのを拒んでいるからだ——そう思うと、ただの動作が急に不思議な出来事に変わります。手で壁を押しても通り抜けないこと、椅子に座れること、その一つひとつが二種類の粒子のふるまいの結果なのだと考えると、世界が一段くっきりして見えるのです。夜空を見上げて星が光っているのも、その内部で粒子が折り重なる量子のふるまいが支えているのだと思うと、宇宙の話と手元のコップが一本の線でつながって見えます。難解だと敬遠していた量子力学が、自分の手のひらの上で起きている話だと分かったとき、これまで遠い存在だった物理が急に親しみのあるものになりました。

知らないままだと、世界の設計図を見ずに生きることになる

この本に出会わなければ、私はこれからも世界を「無数の素材の寄せ集め」としか見られず、その奥にあるシンプルな仕組みに気づかないままだったはずです。著者の森弘之さんは大学で物理学科の教授を務め、物性理論や冷却原子の研究を専門としてきた研究者です。最前線で粒子のふるまいを見つめてきた人だからこそ、専門知識を持たない読者にも、二つの粒子という一本の筋で世界を見せることができます。世界を成り立たせている設計図を一度のぞいてみたい方にこそ、手に取ってほしい一冊です。

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2つの粒子で世界がわかる 量子力学から見た物質と力 (ブルーバックス) 森弘之 / 講談社

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