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新書嫁レビュー ・ 約 3 分

22億人が信じているのに、日本人はほとんど何も知らない

キリスト教は「外国の宗教」として遠ざけていた

クリスマスを祝い、教会で結婚式を挙げ、ハリウッド映画を楽しみながら、キリスト教そのものについては何も知らずに生きてきました。「信仰がない自分には関係ない話」という感覚が根底にあって、イエス・キリストとは何者なのか、聖書にどんなことが書かれているのか、聞かれても答えられない。それで困ったことはないので、まあいいかと思っていました。しかし気づくと、世界の政治・文化・芸術・文学のあらゆる場面でキリスト教の文脈が前提とされていて、それが見えないために「わかった気がしない」という感覚がずっとありました。中村圭志著『知ったかぶりキリスト教入門』を読んで、その感覚の正体がわかりました。

「三位一体」の意味を一度も正確に理解していなかった

本書が取り上げる99の問いの中でも、特に印象的だったのは「三位一体」の解説です。父なる神・子なるキリスト・聖霊という三つが「一つ」だという概念は、長年なんとなく聞いていながら、実は何を意味しているのか全く理解できていませんでした。本書はこれを「信仰の核心にある最大の謎」として正面から取り上げ、なぜこの概念が生まれたのかを歴史的な文脈で説明します。イエスはユダヤ教の活動家として実在した人物であり、その死後に信者たちが「この人こそ救世主(キリスト)だ」と信じた結果として、キリスト教という宗教が生まれた——この「起点」を知るだけで、聖書の物語の見え方が一変します。

さらに、イスラム教との関係も本書で初めて理解できました。同じ「アブラハムの宗教」を源流に持つ二つの宗教がなぜ対立するのか、その構造的な理由が本書には書かれています。また、日本の仏教との比較をとおして、宗教というもの全般への理解も深まります。本書にはさらに聖書の各書物の成り立ちや、教会の歴史についても詳しく書かれています。ぜひ本書で確かめてみてください。

「知らない」を自覚してから、世界が別の顔を見せてくれた

この本を読む前、ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」をただの有名な絵として見ていました。でも今は、その絵の中で何が起きているのか、誰が誰を指し、この場面に描かれた緊張がどこから来ているのかが理解できます。映画でもニュースでも、「キリスト教の文脈」が見える目を持てると、表面だけではなく底に流れているものが伝わってくる。世界の22億人が共有している物語のコードを少しでも理解した後では、同じ景色を見ながら解像度が一段上がった感覚があります。

本書が他のキリスト教入門書と異なるのは、「信じるかどうか」という問いをいったん棚上げし、「なぜこの宗教がこのような形になったのか」という社会・歴史的な問いとして宗教を見る立場を貫いている点です。著者の中村圭志は宗教学者として、複数の宗教を外側から観察する訓練を積んだ人物であり、キリスト教に対しても信者でも批判者でもない、客観的な観察者として向き合っています。その距離感が、宗教を持たない日本人にとって最も読みやすい入門書の一つにしています。知識がゼロの状態から、「教養としてのキリスト教」を身につけるための最初の一冊として、本書は確実に機能します。

信仰を持たなくても、これを知る意味は大きい

北海道大学文学部を卒業し、東京大学大学院で宗教学を専攻した著者・中村圭志は、信仰を持たない人に向けて宗教を平易に解説することで定評のある宗教学者です。『教養としての宗教入門』『宗教図像学入門』など中公新書でのシリーズも人気があり、宗教を「信じるかどうか」ではなく「知る教養」として伝える書き手として知られています。キリスト教を知らないままでいると、世界の歴史・文化・政治の文脈の半分以上が見えないまま終わります。

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知ったかぶりキリスト教入門 イエス・聖書・教会の基本の教養99 (幻冬舎新書) 中村圭志 / 幻冬舎新書

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