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新書嫁レビュー ・ 約 3 分

幸福は個人のものか、社会のものか——半世紀前の一冊が問い直すこと

幸せは、自分が手に入れる個人的なものだと思っていた

幸福というものを、私はずっと一人ひとりが自分の努力で勝ち取る、きわめて個人的なものだと考えていました。自由もまた、誰にも縛られずに自分の好きに生きられること。そう思っていたのです。けれど日々のニュースに触れるたびに、どこか割り切れないものが残りました。一人の幸せだけを追い求めても、まわりの社会がぎくしゃくしていれば、その幸福もどこか落ち着かない。個人の自由と社会のあり方は、本当に別々のものなのだろうか。その問いを、私はうまく言葉にできずにいました。西沢舜一さんの『愛と自由―個人の幸福と社会進歩の理論』は、その引っかかりに正面から向き合った一冊です。

個人の幸福と社会の進歩を、ひと続きで考える視点

本書は、その表題が示すとおり、個人の幸福と社会の進歩を切り離さずに考えようとする評論です。著者の西沢舜一さんは、愛や自由という、ともすれば私的な感情とされがちな主題を、人と人とのつながりや社会のあり方と結びつけて論じています。表題に「個人の幸福と社会進歩の理論」という副題が掲げられているとおり、この二つを別々の問題としてではなく、ひと続きの理論として描こうとしているのが本書の骨格です。一九七七年に新日本新書の一冊として書かれたもので、当時の社会を背景にした議論ではありますが、「個人の幸福と社会のありようは別物なのか」という問い自体は、半世紀を経た今もなお古びていません。むしろ、個人の幸福がさかんに語られる現代だからこそ、この問いはあらためて重みを増しているように感じます。これはあくまで著者一人の立場から組み立てられた理論であり、唯一の正解として読むものではありません。けれど、自分が当たり前に抱いていた幸福観や自由のとらえ方を、いったん立ち止まって問い直すきっかけを与えてくれます。著者がどんな筋道で愛と自由を結びつけていくのか、その論の展開はぜひ本書で確かめてみてください。

「自分の幸せ」を考える角度が増えた

この本の問いに触れてから、私が幸福について考えるときの角度が一つ増えました。以前は、給料が上がる、欲しいものが手に入る、といった自分の状況の改善だけを幸せの物差しにしていました。けれど今は、ふと立ち止まったときに、自分の周囲の人間関係や暮らしている社会のありようも、自分の心地よさに静かに影響していることを意識するようになりました。たとえば職場で誰かと協力して一つの仕事を終えたときの満足感を、以前は単なる達成感として片づけていました。今はそこに、人とのつながりがもたらす幸福という、もう一つの層を見いだせるようになっています。週末に近所の人と立ち話をしたあとの、なんとなく満たされた気持ち。それも以前なら見過ごしていた感覚です。自分一人の損得だけでは説明しきれない幸福が、暮らしのあちこちに静かにまぎれていることに、少しずつ気づけるようになりました。

当たり前の幸福観を、いったん疑ってみる

この本に出会わなければ、私は「幸福は個人だけのもの」という枠組みを、一度も疑わないまま過ごしていたと思います。本書は半世紀前に書かれた、特定の時代と立場を背負った評論です。だからこそ、今の自分の価値観をそのまま重ねるのではなく、一つの考え方として距離を取りながら読むことができます。当たり前だと思っていた幸福や自由のとらえ方を、別の角度から眺め直してみたい方に、静かな刺激を与えてくれる一冊です。

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愛と自由―個人の幸福と社会進歩の理論 (1977年) (新日本新書) 西沢 舜一 / 新日本新書

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