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新書嫁レビュー ・ 約 3 分

「わかりやすい文章」を目指すほど、自分が消えていく

わかりやすい文章こそが正解だと思っていました

結論から先に述べ、無駄な言葉を削ぎ落とす。そうした「言語化力」を鍛えることこそが文章上達の道だと、これまで疑ったことがありませんでした。ビジネス書やnoteの記事を読んでは型をなぞり、それでも自分の書いたものがどこか誰かの劣化コピーのように感じられて、しっくりこない日が続いていました。効率的に書けば書くほど、自分の声が薄れていくような違和感です。ところがレジー『ビジネスパーソンのための「芸風」で書く技術』(幻冬舎新書)の存在を知り、その違和感の正体がはっきりしました。効率的でわかりやすい文章は、書き手の視点のクセや迷いの痕跡といった「その人らしさ」を引き換えに差し出しているという指摘に、根底から見方を覆されたのです。

芸風とは〈問題意識+着眼点〉×文体である

著者のレジーは1981年生まれ、海城高校・一橋大学商学部卒の批評家です。メーカーのマーケティング部門やコンサルティングファームで事業戦略の立案に携わりながら、Jポップやビジネス、キャリアを主題に執筆を続けてきました。新書大賞2023入賞作『ファスト教養』や『東大生はなぜコンサルを目指すのか』などの著作で知られ、会社員と物書きの二足の草鞋を長く続けてきた実践者だからこそ語れる説得力があります。文章術の本でありながら、単なるハウツーにとどまらない「第三の文章術本」を目指したと、著者自身が述べています。本書では「芸風」を〈問題意識+着眼点〉に文体を掛け合わせたものと定義し、ロジカルで結論ファーストな文章が量産される今だからこそ、その人にしか書けない言葉の持ち味を育てる技術を説いています。刊行にあわせた著者インタビューでは、深夜に書いた怒りの長文メールがなぜか上司に読まれてしまったというエピソードも明かされているそうで、その顛末はぜひ本書で確かめてみてください。

「自分の文章」を恥じなくてよくなった

この本の考え方を知ってから、企画書やメールを書くときの気持ちが少し軽くなりました。以前は寄り道めいた言い回しを見つけると、すぐに削って型にはめ直していましたが、いまはその迷いの痕跡こそが自分の視点の証拠かもしれないと思えるようになったのです。会議の議事録ひとつをとっても、無機質にまとめるだけでなく、どこに引っかかりを感じたかを一言添えるようになりました。先週も、社内向けの提案資料に自分なりの迷いをひとこと残してみたところ、普段は反応の薄い上司から「らしさが伝わってきた」と声をかけられ、正直驚きました。効率だけを追っていたら、きっと最後まで気づかなかった変化です。文章を書くことが、正解を探す作業から、自分の考え方を確かめる時間に変わってきています。

締め

新書大賞2023に入賞した代表作『ファスト教養』をはじめ、批評家としての顔と、マーケティング畑の会社員としての顔を長年両立させてきたレジー氏だからこそ書けた、実践に裏打ちされた文章論だと感じました。効率化の波の中で消えかけていた「その人らしさ」の価値を、あらためて言葉にしてくれる一冊です。

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ビジネスパーソンのための「芸風」で書く技術 レジー / 幻冬舎新書

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