心の不調は、性格や気の持ちようの問題だと思っていた
気分が晴れない朝が続くと、自分の性格が後ろ向きだからだ、もっと前向きに考えなければ、とつい自分を責めてしまいます。私もずっと、心の不調は気持ちの強さや考え方の問題だと信じていました。だからこそ、どれだけ意識を変えようとしても気分が安定しないことに、どこか説明のつかないもどかしさを感じ続けていたのです。何かを頑張っても土台が揺れているような、その違和感の正体がわからないままでした。溝口徹さんの『心の不調の9割は食事で治る』は、その違和感に思いがけない角度から答えをくれた一冊でした。
落ち込みの引き金は、心ではなく血糖と腸にあった
本書が示すのは、心の状態を左右しているのは気合いではなく、血糖値の乱高下と腸の状態だという視点です。たとえば甘いものや精製された炭水化物で血糖値が急に上がると、その後の急降下が不安やイライラ、強い眠気を引き起こす。気分の波だと思っていたものが、実は食後数時間の体内の化学反応だった、というのです。脳の働きを支える神経伝達物質の多くが腸でつくられること、同じ種類のタンパク質ばかり食べ続けることが負担になることなど、自律神経を整える食事の考え方が具体的に語られます。心が弱いから落ち込むのではなく、脳と体の燃料がうまく回っていないから気分が安定しない。本書を読むと、その順序が今までと逆だったことに気づかされます。朝に何を口にするかで一日の気分の土台が変わること、空腹を我慢しすぎることがかえって不調を招くことなど、毎日の食卓ですぐ試せる視点も少なくありません。本書ではさらに、鉄や脂質のバランスといった、心の安定を支える栄養の話にもより踏み込んで展開されています。気分の浮き沈みに心当たりがある方は、ぜひ本書でその仕組みを確かめてみてください。
自分を責める前に、まず昨日食べたものを思い出すようになった
この視点を知ってから、気分が沈んだときの受け止め方が変わりました。以前は「また落ち込んでいる、自分はダメだ」と気持ちの問題として抱え込んでいました。今は午後に急に不安が強まると、そういえば昼に菓子パンだけで済ませたな、と昨日や今朝の食事をまず思い返すようになったのです。原因を性格ではなく食卓に探せるようになっただけで、不調が起きても自分を責めずに済むようになりました。たとえば大事な予定の前には、菓子パンだけで済ませず、たんぱく質を一品足しておこうと自然に思えるようになったのです。気分は意志の力で押さえつけるものではなく、整えられる条件があるもの。そう捉え直せただけで、自分への当たりがずいぶんやわらかくなりました。心と体が地続きだと実感できると、毎日の一食一食が自分を整える小さな手段に見えてきます。
知らないままだと、ずっと見当違いの場所を探し続けていた
もしこの本を読まなければ、私は心の不調の原因を性格や努力不足の中にだけ探し続けていたと思います。著者の溝口徹さんは2003年に日本初の栄養療法専門クリニックを開設した医師で、長年オーソモレキュラー療法に取り組んできた専門家です。臨床で多くの心身の不調に向き合ってきたからこそ語れる、食事と心の結びつきがここにあります。気分の問題を抱えながら理由がつかめずにいる方にこそ、一度読んでほしい一冊です。