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新書嫁レビュー ・ 約 3 分

最強の戦闘機は、速さや火力で語られていなかった

戦闘機の強さは、スピードと武器の量で決まると思っていた

戦闘機が強いとはどういうことか。私はずっと、より速く飛び、より多くのミサイルを積めるものが強いのだと単純に考えていました。アクション映画で見る空中戦のイメージそのままです。けれど、その理解のままニュースで最新鋭機の話題に触れても、なぜそれが脅威なのかが今ひとつ実感できず、どこか他人事のように聞き流していました。本書を読んで、自分の前提がまるごと古かったことを思い知らされます。現代の最強は、相手より先に見つけ、相手に見つからないことで決まる。空の戦いのルールそのものが、いつの間にか書き換わっていたのです。

「見つからない」ことが、圧倒的な強さを生む

本書が解き明かすのは、F-22ラプターという戦闘機が持つステルス性と、超音速巡航能力です。ステルスとはレーダーに映りにくくする技術で、敵が存在に気づく前に、こちらは相手を捉えて攻撃できる。さらにアフターバーナーに頼らず巡航速度で音速を超えるスーパークルーズという能力が、行動範囲と奇襲性を一段引き上げます。本書によれば、F-22が参加した模擬空中戦では、既存の戦闘機を相手に圧倒的な撃墜比を記録したとされ、その差は火力ではなく見つからないという一点から生まれていました。見えるか見えないか、ただそれだけの差が、戦いの結果をここまで決定的に分けてしまう。その事実が、強さという言葉の中身を根こそぎ入れ替えてしまいました。本書ではこのほかにも、レーダーに映りにくい機体の形状の理由や、特殊な素材と設計思想、そして開発から実戦配備に至るまでの予算や政治をめぐる曲折が、専門用語をかみ砕きながら丁寧に解説されていきます。なぜこの機体はこれほど高価になったのか、なぜ生産数が絞られたのか。技術の話が、いつのまにか時代の物語へとつながっていく。一つの技術がいかに常識をひっくり返すか、その過程を追うだけで引き込まれます。

ニュースの見え方が、立体的になった

読み終えてからというもの、報道で戦闘機や防衛の話題が出るたびに、受け取り方がはっきり変わりました。以前なら配備の数や見た目の迫力に目がいくだけでしたが、いまは見つからない技術がどこまで進んでいるのか、という見えない部分に意識が向きます。空を飛んでいく旅客機を見上げたときでさえ、この翼の形は何のためかと想像する癖がつきました。さらに国際情勢のニュースに触れても、どの国がどんな技術を持っているかという視点が加わり、報道の裏側まで読み取ろうとする自分がいます。技術は理屈を知って初めて凄みが分かる。漠然と眺めていた世界の輪郭が、知識という補助線で急にくっきりしてくる感覚は、思った以上に心地よいものでした。

知らなければ、強さの本当の意味を取り違えたままだった

最強という言葉の中身を、私はまるで誤解していました。著者の青木謙知さんは、長年にわたり航空ジャーナリストとして第一線で活動し、テレビや雑誌で解説を重ねてきた人物です。専門誌の編集長を務めた経歴を持つからこそ、難解な軍事技術を素人にも届く言葉へと翻訳してみせる確かさがあります。もし読まなければ、私はこれからも速さと火力という古い物差しで空の戦いを眺め、本当の脅威の正体を見過ごしていたでしょう。テクノロジーが世界の力関係をどう動かすのか、その入口としても、一度確かめてみてください。

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