宗教は「信者本人の話」だと思っていた
特定の宗教を信仰している人の話は、その人自身の問題であって、家族や子どもとは別の話だという感覚がありました。「信教の自由」という原則の中で、親がどの宗教を信じるかはその親自身の選択であり、子どもへの影響は二次的な問題として扱われることが多かったのです。
でもこの本を読んで、「親が創価学会員である」ことが子どもにとってどういう体験であり、その子どもがどのような社会的・心理的な問題を抱えながら成長するかが、丁寧に描かれていました。宗教は信者だけでなく、その家族、とりわけ子どもに大きな影響を与えるという事実が、この本の核心にあります。
この本が、宗教と家族・子どもの関係、そして宗教2世という社会的な問題への見方を根本から変えてくれました。
「親の信仰」は子どもにとって「選択できない環境」だった
本書は、宗教と社会の関係・信仰2世問題を取材してきた著者が、創価学会員の親を持つ子どもたちの体験と問題意識を取材した一冊です。いわゆる「宗教2世」の視点から、宗教と家族の関係を描いています。
著者が丁寧に描くのは、創価学会という組織の中で育った子どもたちが、自分の意思とは無関係に宗教活動に参加させられる体験です。学会活動への参加・勧誘・選挙活動への協力——これらが「家族の当然の在り方」として求められる中で、子どもは「断る」という選択肢を持てません。
また、学校や友人関係においても、親の宗教が原因で生じる困難があります。「うちの親は創価学会員だ」ということを友人に打ち明けることへの不安・選挙前後に親から選挙協力を求められることへの葛藤——これらが、親の信仰を持たない子どもたちにはない固有の重さとして存在します。さらに、成人になって信仰を持ち続けるか離れるかという選択の場面では、親との関係・組織との関係をどう維持するかという複雑な問題が生じます。信仰という「親の選択」が、子どもの人生の選択にまで影響し続けるという現実が、丁寧に描かれています。本書にはさらに、創価学会の組織構造と、2世たちが信仰から距離を置くプロセスについても詳しく語られています。ぜひ本書で確かめてみてください。
「2世問題」が社会的な課題として見えるようになった
この本を読んでから、宗教2世に関するニュースを見るときに、「その人が育った環境ではどういう体験があったか」という問いを持つようになりました。宗教から離れようとする人への「なぜ離れるのか」という問いは、その人が置かれていた状況への理解なしには答えられません。
「信教の自由」は個人の権利ですが、子どもはその権利を完全な意味では行使できません。親の信仰が子どもに及ぼす影響は、宗教の問題であると同時に子どもの権利の問題でもあります。この視点が、社会への理解を深めてくれます。
宗教2世問題を取材した著者が語る「親が創価学会員の子どもの体験」
宗教と社会の関係・信仰2世問題を精力的に取材してきた著者が、創価学会員の親を持つ子どもたちの体験と問題意識を取材したイースト新書の一冊です。「信教の自由」の裏にある子どもへの影響が浮かび上がります。
この本を読まなければ、宗教を「信者本人の話」として受け取ったまま、その家族、とりわけ子どもが抱える固有の困難を知らずにいたと思います。