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新書嫁レビュー ・ 約 3 分

会津藩は「勤王の藩」だった——それでも朝敵にされた理由

会津藩は「賊軍」だと、歴史の授業で教わった

戊辰戦争で幕府側に立ち、明治新政府に抵抗した会津藩。「時代の流れに逆らった旧勢力」として負けた——そういう印象を長らく持っていました。歴史は勝者が書くものだとは知っていても、会津がなぜそこまで激しく抵抗したのか、その核心には踏み込んでこなかったのです。維新の物語は「古い体制が倒れ、新しい日本が生まれた」という一本線の筋書きでしか見ていなかった。でもこの本を読んで、その筋書きが大きく揺らぎました。

天皇を守っていた藩が、なぜ天皇の敵になったのか

本書の核心は、会津藩主・松平容保が京都守護職として孝明天皇から厚く信頼されていたという事実です。孝明天皇は容保に御宸翰(直筆の手紙)を送り、その忠義を称えていました。つまり会津藩は天皇の側近くあって宮廷を守り続けた藩だったのです。それが突如として「朝敵」の烙印を押される——これが本書の問いです。

著者の星亮一は東北大学文学部国史学科を卒業後、福島民報社で会津若松に赴任し、「会津若松史」の編纂事業に携わった歴史作家です。2005年には戊辰戦争研究会を発足させて主宰し、『奥羽越列藩同盟』で福島民報出版文化賞を受賞しました。その先祖も戊辰戦争・白河口の戦いに参戦した仙台藩士であり、この問いへの向き合い方は他の研究者とは異なる深みを持っています。

本書では、鳥羽・伏見の戦いが薩摩藩と長州藩によって政治的に会津藩を追い込む形で展開されたという視点が描かれています。錦の御旗を掲げて「官軍」を名乗ることで、会津を朝敵として位置づけるカラクリが本書では詳細に追われています。本書にはさらに、孝明天皇の崩御をめぐる状況と政変の関係についても踏み込んだ章があります。ぜひ本書で確かめてみてください。

「勝者の歴史」では見えなかった問いが生まれた

この本を読む前は、明治維新を「近代化という進歩の物語」として眺めていました。読んだ後は、戊辰戦争の死者の埋葬を禁じられた会津藩士たちの話が、全く別の重さを持って届くようになりました。歴史の「正義」は勝った側が決めるものであり、敗者の側の真実は長い時間をかけて掘り起こされなければならない——その感覚が、以前よりずっとリアルになっています。維新の物語を一面からしか見ていなかった自分が、今では別の角度から幕末史を眺められるようになっています。

本書を読んで特に印象に残ったのは、松平容保が死ぬまで手放さなかったという孝明天皇直筆の御宸翰の話です。「朝敵」の汚名を着せられながらも、自分は天皇を裏切っていないという確信を胸に抱き続けた容保の生涯は、ただの「時代の敗者」という言葉では収まりません。著者は先祖が仙台藩士として戊辰戦争を戦った当事者の子孫でもあり、「勝者の歴史」では語られない痛みへの共感が、この本の筆致に宿っています。会津藩士の名誉回復が語られるようになったのは、明治維新から百年以上が経過してからのことです。歴史を問い直すことに、遅すぎることはありません。

知らないままでいると、明治維新の半分しか見えない

「勝者の歴史」に慣れ親しんでいると、敗れた側が何を守ろうとしていたかが見えません。会津藩が死守したものは、天皇への忠義と武士の道義だったと本書は示します。それを知ったとき、「古い体制への抵抗」という紋切り型の説明がいかに表面的だったかに気づきます。幕末維新史に興味のある人はもちろん、歴史の「裏側」を知ることで現代の日本を見直したいと思う人にも、本書は確実に何かを変えてくれます。

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