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新書嫁レビュー ・ 約 3 分

日本酒は衰退ではなく『再構築』中——クラフトジン・日本ワインが書き換えるお酒の地図

「日本のお酒——日本酒・ビール・ワイン——は伝統産業として若者の離れと国内消費の減少で衰退していくだけだ」とずっと思っていた

「若者の酒離れ」「日本酒消費の長期的減少」「ビール市場の縮小」——お酒関連のニュースで聞くのは、たいてい衰退の話でした。日本酒は地方の蔵元が次々と廃業し、大手ビールメーカーは海外展開でしのぎ、若い世代はアルコールを避ける——この傾向の中で、「日本のお酒文化は静かに消えていくのだろうな」という諦めに似た感覚を持っていました。

でも、街にはクラフトビールのブルワリーが増え、日本ワイン・クラフトジン・梅酒の新銘柄が次々と登場し、家飲み・小規模飲食店・体験型酒蔵などのスタイルが広がっている——衰退の話とは別の動きが、同時並行で起きている感覚はありました。その「別の動き」を体系的に把握する手がかりがありませんでした。

都留康著『お酒はこれからどうなるか——新規参入者の挑戦から消費の多様化まで』を読んで、その動きの全体像が見えてきました。

日本のお酒業界では、新規参入者の挑戦と消費の多様化が、伝統の枠組みを打ち破る形で進行している

著者が本書で示す核心は、日本のお酒市場が「単純に縮小している」のではなく、新規参入者(クラフトブルワリー・小規模ワイナリー・クラフトジン蒸留所)の挑戦と、消費スタイルの多様化(家飲み・体験型施設・ノンアルコール)が同時並行で進行しており、業界全体が再構築されているという事実です。著者は経済学者として、生産現場と消費動向の両側を分析し、お酒の未来を経済学の視点から考察します。

特に印象的なのは、新規参入者たちが「伝統の枠組み」を破る形でお酒を作り出している点です。日本ワインの生産者は欧州ワインの権威主義から自由な発想で日本独自の品種・醸造法を試し、クラフトビールのブルワリーは大手ビール会社の規模の論理に対して「地域性」「実験性」「コミュニティ」を武器に市場を切り開いています。日本酒の世界でも、若い世代の蔵元が伝統製法を守りつつ、輸出戦略・新商品開発・酒蔵ツーリズムで新しい市場を作っています。消費側でも、コロナ禍を契機に家飲みが拡大し、製造施設を併設する飲食店(ブルーパブ・蒸留所併設バー)が増え、ノンアルコールカテゴリーが急成長——「お酒の楽しみ方」自体が再定義されています。本書にはさらに、消費税制・流通構造・地方経済との関係が経済学的に分析されています。ぜひ本書でその全貌を確かめてみてください。

「衰退と再生」を同時に見る視点が生まれた

読む前と後で、お酒と地方産業への向き合い方が変わりました。以前は「日本酒の蔵元が減っている」「ビール消費が落ちている」といったニュースを衰退の話として受け取っていました。でも今は、「衰退している領域と、新しく立ち上がっている領域を同時に見る」という視点を持てるようになりました。

具体的には、街でクラフトビール・日本ワイン・クラフトジンを見かけたとき、それらが「単なる流行」ではなく「日本のお酒産業の構造的な再編」の表れとして読めるようになりました。地方の蔵元が次世代に引き継がれて新しい挑戦を始めるニュースを、地方経済の再生の手がかりとして注目するようになります。「お酒」を文化と産業の両面から見るとき、衰退の話だけでなく挑戦と多様化の話も同時に把握できる視点が、本書を通じて獲得できました。

一橋大学名誉教授・経済学者が、生産と消費の両面から日本のお酒の未来を分析した

都留康は経済学博士・一橋大学名誉教授・新潟大学日本酒学センター非常勤講師として、労働経済学と日本企業研究を専門に長年研究してきた経済学者です。日本酒研究にも継続的に取り組み、生産現場と消費動向の両側を実地調査してきた著者だからこそ、本書では業界紙的な解説ではなく、経済学の枠組みでお酒産業の現在と未来を読み解く射程が成立しています。

この本を読まなければ、日本のお酒を衰退の物語として理解したまま、新規参入者と消費の多様化が酒文化を作り変えている現実と向き合う機会を持てないままでいたでしょう。

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お酒はこれからどうなるか: 新規参入者の挑戦から消費の多様化まで (1009;1009) (平凡社新書 1009) 都留 康 / 平凡社新書

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