← ブックフィード 新書嫁 PR

新書嫁レビュー ・ 約 3 分

人生のピークは若い頃。そう信じて生きるのは、もったいない

楽しい時間は若いうちに終わると思っていた

人生の輝きは若い頃にあって、年を重ねるほど自由も体力も減り、できることが少しずつ削られていく。私はどこかでそう思い込んでいました。だから年齢を重ねるたびに、これからは下り坂なのだと、静かに覚悟を決めていたのです。新しいことに踏み出すたび「この歳で今さら」という声が頭をよぎり、心の奥に小さな諦めが住みついていました。何をしても、もう遅いような気がして、どこか満たされない感覚が消えなかったのです。ところが弘兼憲史さんの『弘兼流 人生は後半戦がおもしろい』を読んで、その前提が気持ちよくひっくり返りました。

後半戦こそ、おもしろくなるという発想

本書が伝えるのは、人生の後半は減っていく時間ではなく、味わいが増していく時間だ、という見方です。弘兼さんは、人と比べることをやめること、うまくいかなければ諦めて次へ進むこと、幸せの基準は自分で決めていいことなど、肩の力が抜ける人生訓を次々と差し出します。印象的なのは、その多くが映画の中に隠されていたという点です。長年の映画好きである弘兼さんが、一本の作品から後半生をポジティブに味わうヒントを掬い上げていく語り口に、思わず引き込まれます。たとえば「中高年は人と比べてはダメ」「諦めて次へ、が近道」「新しきを温ねて故きを知る」といった一見矛盾しそうな言葉が、軽やかに腑に落ちていく。本書では大人の恋愛のルールや、世界共通の一流の十カ条といった、より踏み込んだテーマも展開されている。読者レビューにも穏やかな共感の声が並びます。年齢を言い訳にして閉じていた扉が、少しずつ開いていく感覚を、ぜひ本書で確かめてみてください。

「もう遅い」が口癖でなくなった

この本を読んでから、私の口癖が変わりました。以前は何かに誘われるたび「この歳でね」と笑って断っていました。今は「やってみようかな」と素直に言えるようになっています。先日も、若い頃に途中でやめた習い事をもう一度始めてみました。周りの目を気にして「いい歳をして」と諦めていたことが、幸せは自分が決めていいことなのだと思えた途端、ふっと足取りが軽くなったのです。同年代の知人と収入や肩書きを比べて落ち込む時間が減り、その分、目の前の小さな楽しみに目が向くようになった。週末に観る一本の映画が、ただの娯楽ではなく、自分の生き方を映す鏡のように感じられるようにもなりました。後半戦は受け身で過ぎていくものではなく、自分で味つけしていけるものなのだと、日々の暮らしの中で少しずつ実感しています。

知らなければ、ずっと下り坂を覚悟していた

この本に出会わなければ、私は人生の後半を、ただ静かに諦めながら過ごしていたはずです。著者の弘兼憲史さんは、累計部数を重ねた『課長島耕作』シリーズで知られる漫画家で、ビジネスの世界に身を置いたのち創作の道に進み、紫綬褒章も受章しています。サラリーマンの哀歓を半世紀近く描き続け、自身も人生の後半戦を存分に歩んできた人だからこそ、その機微をこれほど軽やかに、説教くさくなく語れるのでしょう。年齢を理由に何かを諦める癖がついているなら、その思い込みごと一度ほぐしてみる価値があります。下り坂だとばかり思い込んでいた道が、案外まだ上っていけるものだと、静かに気づかせてくれる一冊です。

この本を手に入れる

弘兼流 人生は後半戦がおもしろい (中公新書ラクレ 856) 弘兼 憲史 / 中公新書ラクレ

次の一冊 ── 同じ主題「暮らし」

シニアのための なぜかワクワクする片づけの新常識 (朝日新書) 古堅純子 / 朝日新書 書評を読む →

← ブックフィードに戻る

弘兼流 人生は後半戦がおもしろい (中公新書ラクレ 856) Amazon 楽天