「単語と文法を覚えれば英文は書ける」と思っていた
英語が書けないのは、語彙が足りないからだ。あるいは文法の知識が穴だらけだからだ。そう信じて、私は単語帳をめくり、文法書を読み直してきました。それでも、いざ自分の言いたいことを英語にしようとすると、頭の中で言葉がばらばらに散らばって、どこから組み立てればいいのかわからなくなる。知識は増えているはずなのに、書く手はいつまでも止まったまま。その停滞の理由が、まったく別のところにあったとこの本は教えてくれました。
英文は「3つの世界」と「24の型」に整理できる
本書が示すのは、伝えたい内容がどの「世界」に属するかをまず見抜く、という発想です。著者は英文を、名詞と動詞が中心となる世界、イコールでつなぐ世界、そして文の中にもうひとつの文の内容が入る世界という三つに分けます。そのうえで、それぞれの世界に対応する型を合わせて二十四に整理します。書きたいことが浮かんだら、まずそれがどの世界の、どの型に当てはまるのかを判断する。すると、ばらばらだった単語が、置くべき場所におさまっていく。冒頭のわずか数ページに掲げられたこの一覧表が、英作文の設計図になるのです。本書ではさらに、一項動詞や二項動詞、三項動詞といった動詞の働きに踏み込み、なぜその型になるのかを丁寧に解きほぐしていきます。読み進めるほど、自分がこれまで「なんとなく」並べていた語の配置に、明確な理由があったことが見えてきます。
「並べる」のではなく「組み立てる」感覚に変わった
この考え方を知る前、私にとって英作文とは、頭に浮かんだ日本語を単語に置き換えて並べる作業でした。だから語順に迷い、できあがった文がどこか不自然でも、その理由がわからなかった。けれど三つの世界という地図を手にしてからは、書き出す前に「これはイコールの世界だな」と当たりをつけられるようになりました。たとえば「彼は医者だ」と「彼は走る」が、頭の中でまったく別の引き出しから出てくる。前者はイコールでつなぐ世界、後者は動詞が主役の世界。同じ「彼は〜だ/する」という日本語でも、英語にする回路がはっきり分かれている。そう意識した瞬間、語順への迷いが驚くほど減りました。文を組み立てる、という言葉の意味が、ようやく実感として腑に落ちたのです。間違えたときも、どの型を取り違えたのかが自分でわかるので、迷子になりません。メールの一文をひねり出すのに費やしていた時間が、明らかに短くなったのを覚えています。
知らなければ、ずっと「感覚頼み」のままだった
この本に出会わなければ、私は今も英文を感覚だけで書き、なぜ通じないのかわからないまま不安を抱えていたはずです。著者の澤井康佑さんは長年英語を教え、英文法の入門書を数多く手がけてきた書き手です。そこに、岩波新書『日本人の英語』で知られる明治大学名誉教授マーク・ピーターセンさんが、ネイティブの視点から的確な補足を添えています。学ぶ側のつまずきを知り尽くした書き手と、英語を母語とする目の両方がそろっているからこそ、説明に死角がありません。語彙を増やしても文法を詰め込んでも書けるようにならなかったのは、能力の問題ではなく、ただ設計図を渡されていなかっただけだったのだと、読み終えて静かに納得しました。感覚頼みの英作文に限界を感じている方こそ、本書でその設計図を確かめてみてください。