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新書嫁レビュー ・ 約 3 分

騙されるのは「欲深い人」だと思っていた——本当の狙いは別だった

詐欺に引っかかるのは特別な人だと思っていた

振り込め詐欺やうまい儲け話の被害を聞くたび、私はどこかで「自分は大丈夫」と思っていました。騙されるのは欲が深い人か、判断力の鈍った人だけ。自分は冷静だから引っかかるはずがない、と。けれど、その油断こそが危ういのだと、後から思い知ることになります。家族のもとに不審な請求が届き、普段は冷静な高齢の親が一瞬で取り乱す姿を見て、これは賢さや欲の有無の問題ではないのかもしれない、と感じたのです。日名子暁著『詐欺師たちの殺し文句』は、その直感を裏づけてくれました。

詐欺師が狙うのは「欲」と「迷い」だった

本書が暴くのは、詐欺師が狙うのは標的の「欲」と「迷い」だという法則です。儲けたいという欲だけでなく、どうしようと判断に迷う一瞬の隙——そこに殺し文句が滑り込みます。ある読者は、自宅に届いた架空請求と当選詐欺の体験を語っています。本人はパソコンを持たず、宝くじも買ったことがないからすぐ嘘と見抜けた。けれど高齢の父親はパニックになり、警察に届け出てお金まで用意していたといいます。冷静さは、不意を突かれた一瞬には意外なほどあてにならない。しかもその読者によれば、被害を恐れて警察に届け出ても、届け出があまりに多すぎて「実際に被害に遭ってから来てください」と言われたといいます。詐欺がそれほど日常に入り込んでいるという事実そのものに、背筋が寒くなりました。著者はM資金からネズミ講、振り込め詐欺、震災詐欺まで、昭和から平成の詐欺を俎上に載せ、その手口が時代とともにどう組織化・高度化してきたかを描きます。手口は変わっても、人間の「欲」と「迷い」を突くという核心は変わらない、という指摘が印象に残ります。具体的な殺し文句の数々は、ぜひ本書で確かめてみてください。

「うまい話」より「迷う瞬間」を警戒するようになった

この視点を知る前、私の警戒のアンテナは「うますぎる儲け話」にだけ向いていました。けれど読んだ後は、判断を急がされる場面そのものを警戒するようになりました。今すぐ決めてください、期限は今日まで、あなただけの特別な話です、と急かされたとき、内容の良し悪しより先に「いま自分は迷わされ、急かされている」という構図のほうに気づくようになったのです。儲け話に限らず、買い物でも契約でも、急がせてくる相手にはまず一拍置く。その習慣が、思わぬところで身を守ってくれている気がします。怪しい電話やメールに対しても、その場で結論を出さず、一度持ち帰って家族に話すという一拍を置く癖がつきました。高齢の親にも、内容の真偽を判断させようとするのではなく、「急かされたら、まず私に電話して」とだけ伝えるようにしました。手口を一つひとつ覚えるのではなく、自分がいま迷わされ、急かされている状態にあると気づく。守るべきはその一点だと分かってから、防御の感覚がまるで変わりました。

「自分は大丈夫」と思っていた自分へ

この本を読まなければ、私は詐欺を他人事のまま、自分は賢いから平気だと油断し続けていたと思います。著者の日名子暁氏は、ヤクザや金融など裏社会を長く取材してきたルポライターで、四十年にわたる取材で得た知見をもとに詐欺師たちの手口を解き明かしています。当事者の生々しい証言に踏み込んできた書き手だからこそ、きれいごとでない人間の心理の隙が描けるのです。「自分だけは騙されない」と思っている人ほど、一度読んでおく価値のある一冊です。

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詐欺師たちの殺し文句―あなたの「欲」と「迷い」を見逃さない! (主婦の友新書) 日名子 暁 / 主婦の友新書

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