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新書嫁レビュー ・ 約 2 分

本を「情報として読む」だけでは社会科学は身につかない

本を読めば社会科学の知識がつくと思っていた

ずっと本を読むことと社会科学を学ぶことは、直接つながっているものだと思っていました。経済の本を読めば経済がわかる、社会学の入門書を読めば社会学が理解できる——そんな感覚で読書していました。しかし読んでいるはずなのに、何かが定着していない、「わかった」気がするのに応用できないという感覚がずっとありました。情報として消化しているはずなのに、思考の道具にならない——そのもどかしさの正体を明かしてくれたのが、内田義彦著『読書と社会科学』でした。

社会科学の読書は「概念装置の獲得」である

本書で内田義彦が提示する読書の区別は根本的です。「情報としての読み」と「古典としての読み」——前者は書かれていることを受け取る読み方であり、後者は「概念装置」を自分のものにする読み方です。社会科学において本当に価値のある読書とは、知識の量を増やすことではなく、現象の奥にある本質を見きわめるための「概念という装置」を獲得することだと著者は言います。

電子顕微鏡を使えば肉眼では見えない世界が見えるように、社会科学の概念装置を持つことで、日常の現象の背後にある構造が見えるようになる——この比喩が本書の核心です。マルクス・ウェーバー・アダム・スミスといった古典を「なぜいま読むのか」という問いへの答えが、ここにあります。本書にはさらに、「聴くこと」と「読むこと」の違い、創造現場における社会科学の使い方についても詳しく論じられており、ぜひ本書で確かめてみてください。

読み終えた本への関わり方が変わった

この本を読んでから、社会科学の本を読むとき「この概念はどこで使えるか」という問いを持つようになりました。以前は読後に「面白かった」で終わることが多かったのですが、今は「この著者が使っている概念装置はなにか」「それは自分の日常のどんな場面に当てはまるか」を考えるようになりました。読書が知識の収集から思考の訓練へと変わり、同じ本でも以前より多くのものを受け取れるようになりました。

社会科学の本質を問い続けた経済学者

内田義彦は成城大学で長年経済学を教え、マルクス経済学の研究者として知られながら、社会科学全体の方法論や読書論にも精力的に取り組んだ思想家です。「本を読むことで知識がつく」という思い込みを持ったまま読み続けていたら、社会科学が本来持つ「世界の見方を変える力」には、今も出会えなかったと思います。

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読書と社会科学 (岩波新書) 内田 義彦 / 岩波新書

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